小ねた
2013/10/11 23:09

――小6、10月

「おはよう、紫くん!!」
「やあ、紫原。いらっしゃい」
「やっほ〜。伊藤ちん、赤ちん」

今日は12歳になったミニバス仲間(チームは違うけど)の紫くんのお誕生パーティーである。場所は征ちゃんのおうちである。征ちゃんのおうちは私の家の斜向かいという近距離にある上に、幼い頃は両親がとても忙しかったので親子共々仲のよかった赤司さん宅によく預けられたから、私にとっても半分自分のおうちみたいなもの。

「紫原、誕生日おめでとう」
「紫くん!お誕生おめでとう!これ私たち二人からのプレゼント!!」

さすがになんとなくお誕生を祝うためだと分かっていたのか、紫くんはあまり驚くことなく少しだけ頬をピンク色にした。表情はあまり変わらないのに頬だけ赤くてかわいいなあ、なんて。照れ隠しなのか、棒つきキャンディーをがりがり噛んでいた。

「あ…ありがとー二人とも」
「開けてみて開けてみて!」
「気に入ってくれるといいが」
「……あ!これスイスのチョコ菓子じゃん!!俺、これ前テレビでやっててずっと食べて見たかったんだよね〜。日本じゃ売ってねーし」
「征ちゃんと相談してね、お菓子なら外れないかなって」
「そう。それで、どうせならなかなか入手できない外国のものにしようと思ってね。ちょうど先週父さんがスイスに出張だったから頼んでおいたんだ。今人気みたいで最後の一個だったらしい」
「でも私たちは絶対これ!って思っててね〜。私たちも種類は違うのだけど食べたらめちゃくちゃおいしかったよ〜」

まじで!とほわほわと喜びと表現する紫くんはかわいい。やっぱり無表情で頬だけ赤いけど。

「…………ありがとー、赤ちん、伊藤ちん」
「喜んでもらえてよかった〜!どういたしましてー!」
「どういたしまして。再来月の俺の誕生日は期待しているよ」
「え、なにその煽り。いいよ、今度は俺が伊藤ちんと選べばいいんじゃん。赤ちん、伊藤ちんが選んだものなら何でもいいんでしょ」
「ほう、さすがだね紫原。俺のことをすっかり把握しているな」
「んなの、一年も友達やってたら分かるし。つーか、すぐ分かったし」

えっ、なんて私が間抜けな声を出したのも気に止めず、二人はくすくすにやにや笑っていた。……いやいや、征ちゃんや。ちょっとは否定するとか濁すとかしてくれないかな。恥ずかしい。いやまあ、うれしい限りだけどさ。

「む、紫くん!」
「なあに、伊藤ちん」
「来年も!」
「ん?」
「来年のお誕生日も祝わせてねっ?」
「……ふふ。かわいいな、千加は」
「うん……三人、同じ中学に行けたらいいね」
「ああ、そうだね」

隣の征ちゃんが私の手に触れて、やさしく握りしめてくれた。真向かいにいる紫くんは私の頭をやさしく撫でてくれた。

「紫くん、お誕生日おめでとうでした!!」

来年も再来年もその次の年も、ずっとずっと、おめでとうって言える関係でいれたらいいな。征ちゃんと一緒に、ふたりで、親友のお誕生日を祝えたらいいな。中学生、高校生、大学生、社会人、いつか私たちが大人になっても。大好きな親友の紫原敦くんのお誕生日を。これからも、ずっと。


なかよしさんにんぐみ




紫原おめでとうでした。短めで&大遅刻ですみませんでした。