×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



小ねた
2013/08/06 18:46

日本の中学の部活バスケのレベルの低さに失望した彼は一人黙々と練習していた。公園にあるバスケットコートが空いている時には日が暮れるまで、あるいは日が暮れても、彼は一人鍛練を積んでいた。そんな中で、彼のバスケの将来を大きく変える出会いがあった。が、最初の邂逅はすれ違ったままそれきりのものであった。

――そうして、もうひとつ。

「……ああっ……クソ…」

小さくぼやいた声は汗と共に地面に落ちて消えていった。バスケが好きだ。それは変わらない。だが、どうしようもなく何かが足りない。ここには恩師もライバルであった兄貴分もいない。思わずため息をもらした瞬間のこと。

「……バスケ、好きかい?」
「…は?」

突然見知らぬ声に話しかけられて、その主を確認しようと後ろを振り返り、目に入ってきたのは同い年くらいの少年だった。頭にフードを被っている上に、夕焼けが逆光になっているため、少年の顔はあまり伺えない。ただ、瞳だけは刺すような威力で鋭く光っているような気がした。

「いきなり誰だよアンタ。なんか用か?」
「ストリートバスケか。なるほど……まだ発展途上みたいだな」
「は?いきなり話しかけてきてなんなんだよ?」

そうして静かに噛みつけば、声の主はにやりと笑って、足元に転がっていたボールを取り、くるくると器用に回転させる。その動きや発言からなんとなく察するにこいつもバスケ経験者らしい。その実力のほどはやってみないと正直分からない。しかし、大したことはないのだろう。日本の中学バスケなんかたかが知れている。

「……だが、そうだな。面白いことになりそうだ」
「はあ?何一人でぶつぶつ言ってんだよ、用がないならどっか行けよ」
「――君に一つ、提言をしてあげよう」

瞬間、冷たい風が吹き抜ける。思わず目を細めて、それから見たそいつの表情に、俺は少しだけ、何故だか困惑した。

「もしも、君がバスケをまだ諦めないのなら、今年新設された誠凛高校というところに進学するといい」
「……は?」
「――そこで、君はバスケットボールという競技に対する既成概念を打ち砕かれることになる面白いやつに出会う」

その静かな語り口を無視したってよかった。いきなり意味の分からないことを言い出した顔も名前も分からないやつのことなんて、聞かなくてもよかったはずだった。だが、なんだか第六感が強く働いた。こいつの言葉は、きっと正しいのだろう、と。

「……誠凛?××にある私立の新設校かよ?」
「そうだ。これから先、少なくとも三年間は、日本の高校バスケは実に歴史に残るような、戦争とすら謂わしめられるほどの名試合が多々生まれるだろう。来年、五人の天才を獲得するある五校が、他を圧倒するほどに殊に飛び抜けることになる」
「……その一つが誠凛なのかよ?」
「いや、違う」
「……は?」
「その誠凛は、お前とさっき言った面白いやつ次第で、その飛び抜けることになる五校に拮抗する可能性を得ることになる」

――それは、未来予知だとでもいうのだろうか。信じるに値しない、なんとも怪しい提言だ。なのに、まるでそれは絶対であるかのように目の前のそいつは一切の淀みなく、言う。

「だから、もしも、君がまだ諦めていないなら、そこに進学することを薦めるよ。――……そうして、そこで出会うやつとチームメイトたちとで、その五校を打ち負かしてみせてくれ」

冷たい風に落とし込まれていく言葉は、静かに静かに消えていった。……打ち負かしてみせてくれ?こいつは一体何が言いたいのだろう?面白いやつって誰だ?そして何よりも、……お前は誰なのか?

「……お前、一体、」
「ボール、返すよ。俺の提言は以上だ。お前がどうするかはお前次第だ。決してこの提言を遵守する必要はない。だが、……これは近いうち必ずそうなる絶対的な未来だ。それだけは覚えておくといい」
「いや、そうじゃなくてだな!誰なんだよお前はよ!!」
「……さあね。名乗る気はないよ」

そうして、俺の質問に答えることなく、そいつは背を向けて、ともすれば聞き取れないような小さな、本当に小さな声で、呟いた。

「……お前が出会うのは、「俺」の方ではないから」


僕を打ち負かす唯一の可能性に、俺が望みをかけていた中学三年の冬。




なんていう妄想です。ごめんなさい。もしも赤司が未来を推測して、そしてまた黒子に期待をかけていたなら、もしかして火神に誠凛行きを示唆してたりなんかしてたりしたら面白いのにという捏造です。まだこの進学先のあたりまで出てないですよね?今週のネタバレ見るに黒子は誠凛を中三夏に知ったようですが。まだちゃんと読んでないのでちょっと違うかも。

とりあえず俺赤司は僕赤司やキセキが負けること、そしてその先を望んでいたりしてという妄想。多分キセキ同士で優劣つけてもあんまり意味ないし、かつて捨てたやり方で黒子に証明してほしいとか思ってたらいいのに。

勝ち続けてきた赤司は黄瀬や緑間、紫原までもが流した涙の意味を、まだ知らないのだろうね。