小ねた
2013/08/03 22:29

「征ちゃん」
「んー」
「かまってかまって!」
「このレポート終わったら」
「……えー」
「あともうちょっとだから、冷凍庫のアイスでも食べて待ってて」
「……あい」


――30分後

「……何してるの」
「征ちゃん!レポート終わった?」
「ああ、うん。終わらせたよ、お待たせ」
「お疲れさまー!」
「ありがとう。で、何してるの?」
「……あー、暇だったから昔のアルバム見てたの」
「ああ、なんだ。何か積み上げてると思ったらアルバムか」
「うん、何冊か実家から持ってきてたからね。今見てるのは赤ちゃん時代のやつ」
「……うわあ。お互い小さいな。それにしてもきみはかわいい」
「征ちゃんの方がかわいいよ!女の子みたい!超天使!」
「いや、こんな生意気な顔の赤ん坊なんかかわいくないだろう。ていうか、女の子みたいっていうか、母さんの趣味で本当に女装させられてるじゃないか……」
「征ちゃんの不機嫌っぷりがかわいすぎる!フリフリレースのお揃いの服が私以上に似合ってるよね〜」
「……やめてくれ。きみの方がずっと似合ってるし。この頃じゃなくてこっちの小学生時代の見ようよ」
「あ!こっちも懐かしいね!あの小学校の制服、デザイナーズでかわいかったけど、やっぱり征ちゃんはよく似合ってるよね。イケメンはなんでも着こなすから怖い」
「その言葉そのまま返すよ。きみは何着ても大体かわいいからな」
「…………あ!この時ってあれだよね、音楽発表会のやつ!」
「ついにスルーしたね。これは……あれだよね、きみ舞台に上がるとき思いっきり転けたやつ。ピアノの奏者だったから1人別ラインを歩いてたから目立っちやって」
「うわああ!今思い出しても恥ずかしい!!」
「しかもきみってば驚いたのか床に手を付いたままフリーズしちゃっててさ」
「……それで空気が凍りついた中、指揮者だった征ちゃんがスッと私に手を差し伸べて立たせてくれたんだよね……」
「あのあと全校中になんかちょっとした噂になったよね」
「赤司くんってばまるで王子様みたいだった!って友達に感激した顔で言われたんだよ!!」
「ふふ、あの時のきみの潤んだ瞳はめちゃくちゃかわいかったなあー、懐かしいね」
「……まあ、私もすっかり脳内混乱してたけど、征ちゃんが立たせてくれて、それから両手握ってくれたまんま大丈夫だよって微笑んでくれたんだよね。おかげで緊張もほぐれたし、指揮の最中もこっち見てちょっと微笑してたし」
「あのあとクラスのやつらにさ、本当にお前らラブラブだよなと揶揄されたんだよ、小学生が何言ってるって感じだったが」
「いやいや、どちらかというと私たちが何やってるって感じだと思う」
「ふふ……まあ、そういってもさ」
「……うん?」
「正直ね、僕はあまり器用じゃないんだよ多分。きみが困っているのを見て、何もせずにはいられないんだ。たとえどんな場面でもね。泣いていたら笑わせたいし、笑っていたら触れたい。触れてしまったら今度は離したくなくなる。我慢とかさ、実はあんまり得意じゃないんだ。きみの前ではいつだって、僕は僕を偽れない」
「……取り繕わないでいてくれるのはうれしいかな」
「かっこ悪くてごめんね?」
「かわいい征ちゃんも大好きよー!」
「ちょっとおバカなきみも大好きだよー」
「ひどひー」
「ひどくなひー」
「………ふっ」
「……ふふ」
「でもさあ、とはいっても、征ちゃん、……一回私にうそついたよね……いや二回かな?」
「……ごめん」
「いや、まあ……ちっちゃなうそなら誰だってやるけど……でも、あれは傷付いたかなあ」
「……僕には一生きみが必要です」
「私もです」
「……ん」
「………でも、変わってしまうだけの思いが、そこにあったってことだよね」
「……うん」
「それだけ、征ちゃんにとっては大事なことだったんだよね」
「うん」
「がんばったね、征ちゃん」
「…………ありがとう」
「次は中学のアルバム、見ようか」
「ん」


おもひで、ららら


「見て、青峰くんのこの変顔!黄瀬くんは普通にキメ顔だけど!」
「こっちの写真はテツヤが見切れてる上に、敦は顔がギリギリ写ってないよね」
「……ちょ!この日の緑くんのラッキーアイテムが、ごは○ですよ!なんだけど!!」
「あのキャラクターと同じようにこっそりテツヤが真太郎のメガネをずらそうとしてるのが面白いね」
「……やばい、この写真の征ちゃんかっこよすぎ…」
「そうか?きみを見つめながら、我ながらずいぶんにやけた顔をしていると思うが」
「ちょっとだけ目尻が下がって、上品に口元が上がる征ちゃんのこの笑い方が好きなの!」
「……笑い方ねぇ」
「ふふ、眉間にしわが寄ってますよ、征十郎さん」
「……んー」


おもひで、るるる




赤ん坊時代の征ちゃんさんはきっと天使!