小ねた
2013/07/19 22:13

――所詮この世に救いなどありはしない。

それは彼が口にした最後の悲嘆。

「……赤司」
「残念だが、僕はもう捨てたから。全部、君も、何もかも」
「わたしはもう要らないとでも言うの」
「ああ。……もう何も要らない」

勝利だけが僕が望むすべてだ、思い出も約束も感情も、もう二度と、この手には必要ない。もう、すべて要らない。赤司はそう言って笑った。ただ、笑った。

「……僕はただ勝てさえすればそれでいい」

いつかこんなふうに零れ落ちるなら、もう、二度と触れたりなんかしない。ただ独りで前に進んでいく、戦っていく、生きていく。 勝ち続けさえすれば殺されない、赤司征十郎は存在し続けられる。だから。

「……さようなら」

わたしは、赤司があの日覚ったものを知らない。

「赤司、どこにも行かないで」

いやだよ、彼はただ笑った。もう誰も、赤司を救えない。ただ、今は。


わたしと彼と、いつかの願いと。