小ねた
2013/07/19 02:37

こんな女なんか、放っておけばよかったのに。

「赤司くん」

そう呼ばれて微笑まれること、「すべてが大好きです」と告げられたこと、全幅の信頼を寄せているようなそんな目を向けられること、セックスのときに毎回恥じらわれること、手を握ればすがるように握り返されること、バカみたいに『なずな』を意識していること、不意に切なそうに瞳を翳らせることも。

「なに」
「……赤司くんは冬生まれなんだね」
「それがどうかしたか?」
「ううん、何でもない」
「そうか」
「……はい」

本当は全部いやじゃなかった。些細なことも煩わしくなんかなかった。だからこそ、傍になんて置くべきじゃなかったのに。

「今日もいつものコースな」
「……えっ」
「たっぷり可愛がってあげるよ」
「お手柔らかにぃ!!」
「はは、いやだね」
「赤司くんの意地悪ドS!」
「誉めても何もでないよ」
「お許しくださいご主人様!」
「いいねそれ。ベッドの上でも言わせてやるぞ」
「いやあああ!」
「うるさいな。啼くのはベッドの上だけにしろ」
「いたいです赤司くん!」
「お仕置きだから当たり前だよ」
「……こわい」

――ああ、バカだなあ。バカで、本当にかわいくて仕方がない。

「…少し、誤算だったな」
「え?」
「……なんでもないよ」

もう手放せそうにない、など。いつからそんなに余裕がなくなった?ああ、やはりこんな女放っておけばよかったのに。

「赤司くんって、変なひとだよねぇ」
「どの口が言うかどの口が」
「ごめんなさいこの口です」
「バカだな」
「バカです」