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「#幼馴染」のBL小説を読む
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小ねた
2013/07/17 19:13

僕の幼なじみは生まれたときから美しい。さすがに記憶といった確かなものはないが、両親の証言によれば僕はまだ言葉を話せない本当に生まれて間もない頃から幼なじみの彼女が好きだったらしい。普段は何かとくそ面倒くさいガキだったが、彼女が僕の家に預けられて彼女と一緒にいる間だけは目を見張るくらいに穏やかで、赤ん坊とは思えないくらい賢い振る舞いをしていたらしかった。記憶はないがなんだかさすが僕と思うあたり、自分としては苦笑を禁じ得ないが。

そんなわけで僕は話すことができない頃から既に幼なじみの彼女にデレデレだったようである。ある程度知能が発達し出すと、2歳くらいの時分には野花を摘んで彼女に手渡したり、彼女が転びそうになったらケガをしないように支えるか、あるいは自ら下敷きになったりというフェミニズムっぷり。ただし対象はもちろん彼女に対してだけなのだが。幼稚園に上がってもそれは変わることなく、どこへ行くにも僕は彼女に引っ付いていた。例外はトイレくらいなものだろう。僕の家に泊まった日には食事もお風呂も寝るときも僕ら一緒で、文字通り朝から晩まで僕は彼女を捕まえて離さなかった。夜眠るときに傍にあるぬくもり、あさ目覚めて一番初めに目にする存在。僕は昔から彼女が好きで好きで仕方なかった。それは、双方の両親が呆れるくらいに。

そんな僕が愛してやまない僕の幼なじみである千加はとても美しい。さらさらと風に揺れる髪はとても手触りが良くて、しかもなんとも甘くてやさしい香りがする。あたたかい手のひらは昔も今もずっと握っていたくらいすっかり僕の手に馴染んでいる。やわらかく穏やかな雰囲気はいつも僕を安心させる。彼女の前では、すっかりただの男になってしまうのだが、それは完璧な「赤司征十郎」らしくはないのだろう、だが彼女こそが僕のたったひとつの例外なのだ。ふわりと微笑まれただけで僕はどうしようもなくなる、胸の中でじわりと溶け出す感情はまさに恋以外の何物ではない。僕は彼女の顔も髪も声も香りも手のひらも、彼女のすべてが大好きで、世界中の何よりも美しいと思う。何にも換えがたい僕の、たったひとつの特別。

「ねぇ、千加」
「なあに、征ちゃん」
「……なんでもないよ」

千加はとてもきれい。あんまり美しくて、いとおしいから、時々壊してしまわないか不安になる。いつだって傍において、そのぬくもりに触れていたい。ずっとその笑顔が僕だけのためにあればいい、そのまっすぐな瞳がずっと僕だけを見つめていればいい。そんなふうに思う。でも、奪うかたちにはしたくはないから。どんなにほしくとも、彼女が望んでくれなければ意味がない。愛したいのも愛されたいのも、きみだけだから。だからかな、昔から今もずっときみにだけは僕は勝てた試しがないよ。

「…ふふ、変なの。征ちゃんらしくないね」
「うん、らしくないよね」

赤司征十郎の例外はいつだってきみなのだから。




征ちゃんさんの感性では美しい=心動かすもの。