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小ねた
2013/07/17 18:34

私の幼なじみは生まれたときから美しい。目元は猫のようなつり上がった少しきつめの印象だが、理知的な雰囲気を持つ白皙の美貌で、赤ん坊のときから老若男女あらゆる人々からの視線を集めていたようだった。一方、私はそこそこ美人の母と、イケメンではないがやさしい雰囲気を持つ好青年といった風貌の父から生まれ、まあ可もなく不可もなくそこそこ整っているかな?くらいの美点も欠点も特にないような容姿である。

そんな私は美しい幼なじみが幼い頃から大好きで、またそのきれいさに心奪われている第一人者と自負している。まあ、要は名誉あるファン1号だった。とはいえ、幼なじみは容姿端麗なだけでなく、常に学年一位の頭脳明晰で、またバスケ部に入部するやいなや異例のレギュラー入りを果たし、基本的には穏やかな人柄ゆえ人望も厚く、さらには将棋だろうがポーカーだろうがあらゆるゲームでも完璧に勝ちを納める名手。しかも、実家はお金持ちときた。もはや欠点を探す方が難しいくらいのまさに完璧を絵に描いたような神様の寵児である。

そんな素晴らしい幼なじみは何をとち狂っているのか未だに謎なのだが、何故か、何故か、本当に何故か私なぞにベタ惚れしているのだ。しかも、物心ついたときには既にそうだったという年季の入りよう。

「征ちゃん」
「んー?なあに」
「くっつかないでよ、みんな見てる」
「見せつければいいんだ。きみが僕のだってことをね」
「誰も私に興味ないから、みんなが興味持ってるのは征ちゃんのほうだから」
「きみは少し自分の魅力を自覚したほうがいいね、何せ僕をこんなに虜にしているんだから」
「……征ちゃん」
「ん、今日も好きだよ」
「……私も大好きだよ」

満足そうに微笑む征ちゃんを見て、吐き出そうとした嘆息を飲み込んだ。ずっとこうやって勘違いしてくれたらいいのになあ。大した価値のない石ころを特上のダイヤのように大切に大切にする征ちゃん。ずっと、大切にされてきたけれど、時々こわくもなる。いつか、征ちゃんの目が覚めるんじゃないかって。そうなったらどうしようと。でもそんな私の不安を一蹴するように、征ちゃんは毎日何度も何度も私に微笑みかけて、あたたかく抱きしめて、やさしく愛を囁くのだ。

「きみが思う以上に、僕はきみがとても好きだよ」

征ちゃんは美しい。壊れてしまいそうなほどに儚い、そんなきれいさ。時々は容赦なく何かを切り捨てることもあるけれど、本当はいつも一生懸命で、まっすぐで、やさしいひと。時々は鋭い瞳が冷たく光ることがあるけれど、その眼差しがあたたかくなる瞬間を私は知っている。子供のように安心しきった顔で目尻を下げて微笑むことも、普通の男の子のように頬を染めて照れることも、私は知っている。笑ったり怒ったり、悲しんだり照れたり拗ねたり、安心したりわくわくしたり。みんなは征ちゃんを一線を引いた存在のように見るけれど、そんなことはないのだ。私にとっては昔と変わらない、かっこよくてやさしい、私のかわいい大切な幼なじみ、私の世界で一番好きなひと。

「征ちゃん大好き!」
「うん、僕も。僕も、大好きだ」


笑ったり怒ったり、時には泣いたり。時には子供みたいに素直に、時には大人として穏やかに。いつか、私たちが年老いてやがて骨になる日まで、きれいなあなたのいろんな表情を見ていきたいと、私は今日も征ちゃんの笑顔を前に願うのです。