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小ねた
2013/07/12 01:37

征ちゃんは私の高校の制服が好きらしい。

「ニーハイ指定までされると思わなかったよ征ちゃん!」
「んー……実は好きなんだよね。似合うと思った、めちゃくちゃかわいいじゃないか」
「ちょっと、にこにこしながら絶対領域撫で回さないでくれる?」
「無理」
「即答!?」
「…ああー、やっぱりいいな。きみのセーラー服姿かわいすぎる」
「征ちゃんも洛山の制服かっこいいね。帝光のはさわやかだったけど、洛山のはなんか大人っぽくていいね」
「そう?」
「…んん、なにさりげなく裾まくり上げてるの…っ」
「……なにこれ、えろすぎ。襲っていい?」
「ふざけんな!ばか!!」
「冗談。最後まではしないよ、まだね」
「最後までは……?ちょ、なにそ……!や、ばかっ!」

最後まではしない、のならばまあ安心してもいいか、というとそんなわけはない。押し倒された状態で、セーラー服の裾がまくられ自分のお腹や下着の一部が征ちゃんの眼前にさらされているなんて。羞恥心でどうにかなってしまいそう。恥ずかしさで頬を染める私をぎらりと欲に浸された瞳で見下ろしている。それから、征ちゃんはゆっくりと微笑み、私の唇にキスを施す。

「大丈夫だから、心配しないで。……僕がこわい?」
「………征ちゃんにならなにされてもいいよ」
「…困ったな」

そういう迂闊なことを言わない方がいいよ、そんなことを囁かれて、ついでお腹から太ももにかけての輪郭をすぅーと熱い手のひらで撫でられる。羞恥心で体温が上がりきり、沸騰したように頭がぼーっとしてしまう。

「…せいちゃん」
「好きだよ」

それから、鎖骨や胸、お腹、太ももの裏側など、服で隠れるところにキスを何度も落とされる。執着心の現れのようなそれは、いくつかの所有印を残し、最終的には痛々しいくらいおびただしい数だった。

「…なにこれ」
「キスマーク」
「そうじゃなくて!」
「いいから。きみが僕のものだって、ちゃんと印を付けたいんだ」
「……征ちゃん以外見ないのに!」
「分かってるよ。そうでないと困る」

くすくすと至極楽しそうに笑うから、二の句が告げない。……正直、歪んでいる。一応服に隠れる位置とはいえ、この数は尋常ではない。それでいて、ひとを半脱ぎ状態にさせておいて、下着には一切触れようとしない姿勢は、まさに最後まではしないという意思表示のつもりのようだ。これ以上のことは、きっとしないのだろう。うれしそうに私の鎖骨あたりにほどこされた鬱血痕をなぞる征ちゃんに、思わずため息。……ばか、かわいいんだよいちいち。

「征ちゃん」
「な、に……!?」

半分起き上がり、征ちゃんのネクタイを引っ張って引き寄せ、その無防備でかわいらしい口許に思わずかぶりつく。きっと驚いた顔をしているに違いない。ああ、征ちゃん、だいすきよ。

「…煽るのだけはほんとうまいよね」
「え?」
「僕も、だいすきだよ」

押し倒されて抵抗する間もなく、強引に唇を奪われる。舌を絡ませて、貪るようにお互いに味わい尽くす。征ちゃんの伏せた長い睫毛があまりに色っぽくて、やっぱりときめいてしまう。

「…私も征ちゃんに付けたい、キスマーク」
「ふふ、そう?ほら、どうぞ?」

ネクタイを緩めワイシャツの襟を征ちゃんは指でくいっと引いた。白く美しい首筋や鎖骨もやっぱり色っぽい。……男の子なのにずるいなにこの色気は。とりあえず誘われるままに噛みついた。

「…んんっ………なにこれ難しい、できない!」
「ふふ、残念だね」
「ただでさえ征ちゃんモッテモテなんだから征ちゃんにこそ付けるべきなのに!」
「心配してくれるのはうれしいけど、浮気なんかしないし、する気もないよ」
「……そー?」
「僕は、きみが好きだからね」
「…私のこと、重くない?」

そうして問えば征ちゃんは珍しくもきょとんと瞳を丸めて驚いていた。それから堪えきれないとでも言うように、おもいっきり吹き出して笑っていた。

「あははは!なにそれもう。ずいぶん、今さらじゃないかい?」
「もう征ちゃん笑いすぎ!」
「…だってさあ」
「ん」
「――たった5歳のときの結婚の約束を本気で信じて、全力で成し遂げようとしている男に、それを言うの?」

抱きしめられて、髪を撫でられる。

「きみと結婚したいと、今でも本気で思っているよ」
「…ほんとう?」
「うん。――何度でも言うよ。僕は今でも変わらずきみが大好きで、きみと結婚したい、きみと添い遂げたいって本気で思ってる」

言い聞かすような口調だったが、少年が夢を語るみたいな楽しげな雰囲気でもあった。征ちゃん、征ちゃん。

「だから、いつか僕らがおじいちゃんおばあちゃんになっても、変わらず一緒にいよう。ふたり手を繋いで散歩をしよう。そんなふうに生きていこう。だから、だからね」

征ちゃん、私もあなたがずっと大好きです。今まで一緒に成長し、育ってきたね。できるなら、この先もそんなふうに年老いていきたいね。だから、だからね。

「ずっと隣にいてね」


いつか、わたしたちがおじいちゃんおばあちゃんになっても。




前半と後半の落差(笑)