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小ねた
2013/06/29 18:24

※中1冬

「お前から見て、俺は幸福そうに見えるだろうか」

突然にこぼされた質問に思わず瞠目した。横にいる赤司はただ無表情のまま、部活の休憩時間中に無邪気にじゃれ合う青、桃、水色の3人を見ていた。マネージャーになったばかりなのでよくわからないがどうやら青峰を中心とした彼らは特に仲がいいらしい。舞台上で赤司はボールを抱えた状態で座り、ボールに肘をつき頬杖をしている。

「…なにが?」
「あの3人」
「仲がいいよね、楽しそう」
「年相応というか。あいつらを見ていると自分はずいぶん冷めていると感じる」
「あーはいはい、自分を他と違う特別な何かだと考える厨二病の代表的な症状ですな」
「俺は特別だ」
「そんなことない」
「……俺は、あいつらとは違う」

苛立つ赤司の髪を掴めば、赤司は眉間にシワを寄せてわたしを睨んだ。…こういうとこは年相応な反応だと思うけどね。

「あんたいい加減自分を特別だと思うのやめたら?」
「……お前にはわからない。俺は上に立つ人間として育てられた」
「だから、他と違うって?自分は特別で、可哀想で、不幸だって?」
「…そこまでは言っていない、俺は決して可哀想ではない」
「でもあんたは今でも不幸だって感じてるんでしょ」

沈黙した赤司に、わたしは髪を掴んでいた手をほどいて、そのまま髪を撫で付けた。きれいな、赤色。

「幸福かどうかは主観的なものだし、それはあんたが決めること。あんたはわたしにはわからないって言ったけど、あんただってわたしのこと知らんでしょ」
「………」
「あのね、赤司」
「……なに」
「あんたさ、前にも言ったじゃん。肩の力抜けって。あんたを幸せにできるのは所詮あんたしかいないんだよ。誰かがあんたを不幸だと思っても、あんたが幸せなら幸せなんだから」
「…そうだな」
「赤司は、赤司でしょ。誰に何を求められても、あんたが望んだように生きて、笑って、泣けばいいのに」

たとえば、賢い頭脳を持てばその知恵を求められる。たとえば、優秀な統率力を評価されて一年生で副キャプテンになる。たとえば、良質な家柄のために将来を嘱望される。赤司の能力や才能、恵まれた容姿や家柄。いろんなものを所有する赤司は、いつもみんなから注目され期待され必要とされる、多くのひとが群がる。それはある意味では幸福なのかもしれない、妬み羨むきもちはわたしにもある。でも、じゃあ、赤司は、常に人のために何かを期待される赤司本人は、本当に幸せなんだろうか。

「赤司」
「……うん」
「赤司はもっとわがままになるべきだよ。我慢するなよ。笑いたいときに、笑いなよ」

ポーカーフェイスは標準装備で、穏やかで紳士的な振る舞い。みんなは赤司をかっこいい、すごい、と評価する。赤司は、何時なんどきも「正解」を選択する。

「……やっぱりお前はへんなやつだな」
「赤司ほどじゃねーわ」
「でも、そんなお前が好きだよ」
「わたしも、不器用な赤司、好きだよ」
「………わかってないだろ」
「ん?」
「まあ、気長に攻略するさ」




アイデンティティー模索してる中学一年の赤司