小ねた
2013/06/27 11:58
「もしかして、赤司くん?」
学生時代、告白されたが悩むひまもなく振った彼女に再会した。
「もしかしなくても赤司だよ、久しぶりだね」
「中学卒業以来……いや成人式の同窓会ぶりかな」
「そうだね、挨拶くらいしかできなかったけど」
そうだねと微笑む彼女はすっかり大人の女性で、ほぼ毎日クラスメイトとして顔を合わせていた十年前の、まだ少女だった頃の彼女を思い出して、月日の流れを無性に感じた。
「あれ、仕事中?」
「ちょっと、営業の帰り」
「おお、大人だねぇ」
だけど、左手を口元に添える笑い方だけは変わっていなかった。
――赤司くんが、すき
「……幸せそうで、よかった」
あの頃も、幸せそうに笑う子だったけど。
――悪いけど、俺はきみのこと、友人以上には思えない。
「赤司くんも元気そうでよかった。前よりももっとかっこよくなってるけど〜」
「はは、惚れ直したかい?」
「もう!赤司くんってば!!」
――…そっか!友達として、これからも赤司くんをずっと応援してるから、
「私は今はもう旦那一筋だから!!」
――だから、自分をもっと大切にしてよ。
あんなことを願われたのは、初めてだった。そして、これからもないだろう。
「そう……お幸せに」
本当は、好きだったと言うのにはもう遅すぎたのだ。だから、あの日泣くのをこらえながら、僕の幸せを笑って願い応援してくれた彼女のように、今日の僕もまた、笑い、願うしかないのだ。