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小ねた
2013/07/05 00:14

「せいちゃんはやさしいね」

そういって笑う幼なじみを僕だけのものにしたいと、ずっとずっと願っていた。


僕は、異質な子供だった。年端のいかない時分から、同じ年頃の他の子どもに比べ群を抜いて知能の高い子どもだった。大人たちはそんな僕を終始もて甘していたし、僕自身他の子たちとのギャップや、齟齬というものの存在を常々肌で感じ取っていた。僕は普通に振る舞っているつもりでも、気を付けてはいたがそれはやはり時に通じないことが多々あった。とはいえ、特段そのことを気に病んでいたわけでもなく、孤独を感じていたわけじゃない。何故ならそんな僕を両親は必要以上に特別扱いはしなかったし、いつだって僕を理解しようとしてくれていたのだから。

「千加のほうが、やさしいよ」
「えー?そうかなあ?」
「うん、やさしい」
「……うーん、だからわたしはせいちゃんがやさしいっておもうのになぁ」

ちょっとだけ困った顔で笑う千加の桃色の頬を見つめた。僕の頬も赤く染まって熱を持って、大好きな女の子しかどんどん見えなくなる。

「……千加」
「そんなせいちゃんが、わたしね、だいすきなんだぁ」

単純な知能そのものならば、確かに千加は他の子とそれほど差はなかった。だが、僕よりも誰よりも、僕のきもちを汲み上げて、ほしいことばをくれるのは、千加だったのだ。いつだって千加は、同い年の子どもなのに時々大人のような振る舞いをする僕を気味が悪いとは言わなかった。なんでもできる怖いやつ、と距離を置いて畏怖の念を露呈したりはしなかった。妬みゆえに必要以上に攻撃したり糾弾したりは一度だってなかった。誰かが異質な僕を遠ざけようとも悲しいなんて欠片も思わないのに、千加が僕から離れていくと考えただけで気が狂いそうなほと不安になった。いつか、千加が僕をいやになったら?僕のきもちを察することが得手である千加が、僕のこの底なしの執着に嫌気がさしたら?気味が悪いと恐怖されたとしたら?

そんなの、ぜんぶこわくてたまらない。

「千加は、いつもわらってくれる、ぼくなんかに」
「なんかとかやめてよ、わたしはせいちゃんだいすきなの!」
「……みんな、ぼくがこわいというよ」
「わたしはこわくなんてないもーん!」

満面の笑みに鮮やかなくらい視線を奪われる。ああ、ずっとその目が僕だけを映していればいいのに。彼女の目も耳も唇も手のひらも心臓も、その愛の行き先もすべて、僕のものにしたい。誰にも見せたくない、触らせたくない。どうしたら僕のものになるの。こんなにほしくてほしくてほしくて頭がおかしくなりそうなくらいほしいのに。

「せいちゃんはわたしだけのやさしくて、かっこいいヒーローだもの」

ヒーロー……柄じゃないような気もするけれど、ああ、それでも。きみが望むのならば、僕は何にでもなろう。誰にも負けないくらい、きみを理解してあげられるやさしい存在になろう。他の誰よりもかっこよくなろう。誰にだって負けない、一番強いひとになろう。ただきみがこの先も僕を見てくれるなら。きみが、これからもこの僕の歪んだ執着と恋慕を受け入れてくれるなら。この僕ならばそんなことはさして難しくはないだろう。

――ずっと、このあたたかな笑顔のために、僕は生き続けていこう。

「だいすきだよ」
「わたしもだよ、せいちゃん!」

だから、その愛らしい瞳がこれからも僕だけを映しますように。ただ、それだけを願う。


きみはぼくの生きる理由


洗脳と教育は幼い頃から!これほどまでの執着を受け入れるだけの度量がある彼女も大概歪んでいますよね。むしろ喜んで束縛を受け入れているわけで、ある意味彼女のほうがやっぱりおかしいのかも。