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小ねた
2013/06/16 13:04

※基本的に「ママ/母さん」や「パパ/父さん」は征ちゃんさんの両親、「お母さん」や「お父さん」は千加ちゃんの両親を指します。

「お母さん。千加、寝ちゃいました」
「あら、本当にあの子はしょうがないなー。せっかく征十郎くんが帰省してくれてるっていうのに」
「いいんですよ。昨日は遅くまで久しぶりに将棋に付き合ってもらいましたから。それより、帰って早々押しかけてすみませでした」
「何言ってんの、うちは征十郎くんのうちでもあるのよ。うちの子だって我が物顔でいつも赤司さん宅にお邪魔しちゃってるしね、うちの子こそごめんね」
「ふふ、ありがとうございます。でも、うちのことならいいんですよ。うちの母さんは、千加がかわいくて仕方なくて実の一人息子の僕よりもかわいがっていますし」
「……まあ、ね。ありがたいっちゃありがたいけれど。昔からうちの子を預かってくれて本当に感謝しているけど」
「気にしなくていいんですよ本当。まあ、さすがにうちに千加の部屋をノリノリで用意してた時は驚きましたけど。ベッドから服から何まで、ノリノリで用意する母さんにはさすがの僕も呆れました。まあ、結果的に千加がもっとうちに来てくれるようになって僕は万々歳でしたけどね」
「……パパさんに申し訳ない」
「いえ、父さんも「千加ちゃんは息子の嫁(確定)だからな」ってそこそこノリノリでしたけど?」
「うわああああ、本当になんか申し訳ない申し訳ない!!!」
「はは、お母さん、千加と同じ反応しますね」
「……でも、感謝しているのは本当なのよ、征十郎くん」
「はい」
「私たちはいくら仕事が軌道に乗ってて大事な時期だからって、わが子をほっぽり出して自分の会社ばかりを気にかけて、ほとんどあの子にかまってやれなかったから」
「……そうですね」
「出張から帰る度に、あの子はいつも「おかえり」って笑ってくれたけど、寂しい思いはさせていたのは自分たちなのにって余計に申し訳なくてね」
「確かに、千加はお母さんやお父さんがいなくて時々泣くこともありました。大好きな実の両親の代わりに、僕やうちの母がなれていたとは思えません」
「でも、それでもあの子がまっすぐに育ってくれたのは、私たちが帰る度に笑えていたのは、征十郎くんのおかげだと思ってるよ」
「…ぼくは、ただぼくが千加のとなりにいたかっただけです」
「ふふ、らしくないなー。自分で、分かってるでしょ。あなたの存在がどれほど千加にとって救いになっていたか、そうして今なおも大きい存在なのか」
「…あんまりうぬぼれたくはないんですが。そうですね、それくらいの自負はあります。僕も、同じですから」
「あの子が寂しいときも悲しいときも、うれしいときも、あなたやあなたのママが傍にいてくれたことに本当に感謝しているの。まあ、そのせいで千加が困った時の第一声が「征ちゃん!」になってることは実の母親として悔しい限りではあったんだけど」
「ふふ、それはすみません。不可抗力です」


――幼いあのころを、思い出して、笑う。


「ただいま、千加。いい子にしてた?」
「おかえり、おかあさん!おとうさん!」
「千加ー!!!お父さんは寂しかったよおおお」
「あのね、きいてきいて!!!あの、あのね!せいちゃんが、せいちゃんがね!」
「ゆっくりでいいから、千加」
「ちかのことだいすきっていってくれたの!ずっといっしょにいてくれるって!!おとなになったら、けっこんしてくれるっていってくれたの!!!」
「け、結婚!!??」
「うん!!!!」

お父さんは認めんぞおおおおおおおおおおお、という空しい絶叫が赤司さんちの玄関先で響く中、征十郎くんと、かねてからの友人である征十郎くんママのふたりがにやにやと全く同じ顔でドヤ顔しているのが印象に残った。夫は千加をぎゅうぎゅうに抱きしめて逃がすまいとしているけれど、当の千加は夫に抱き込まれているままにもかかわらず、征十郎くんとつないだ左手だけは離そうとしていなかった。

「よろしくおねがいします、おとうさん」
「いあいやあああ!俺をお義父さんと呼ばないで征十郎くん!!!」
「いまよばなくても、いずれよびますけどね」
「おそろしいこと言わないでくれええええ」

5歳児に泣かされる三十路もどうなんだろうと思いつつ、うれしそうな娘と親友の息子と、あの策士的表情を浮かべている親友に、とりあえず「私は征十郎くんが息子になってくれるんなら万々歳」って言っておいた。


千加が一番信頼しているのも、そして一番信頼してくれているのも彼なのだから、まあ二人がしあわせなら、それでいい。





まさかの千加ちゃんママ視点でした。親友の数々の武勇伝と、そして征ちゃんパパの面の皮の厚さを知っている千加ちゃんママは、まさか本気になった征十郎くん(両親の強みいいとこどりの最強チート少年)からうちの子が逃げれるはずもないと若干諦めている一方で、自分たちよりも千加から信頼を勝ち得ている子なのだから、千加にとってこれ以上ない相手であることも分かっているので、そのまま本当に結婚してくれたらこれ以上ないと考えている。

新情報:ひろーい赤司さんちには千加ちゃん専用の客間(中身完璧整備)が用意されている。服とかもママや征ちゃんさんと定期的に補充していた。

ちなみに千加ちゃんの両親は新興の会社の社長、ママは副社長のような秘書のような補佐立場で、千加ちゃんが幼少時はふたりして国内国外問わず飛び回っていたために、不在が多かった。という設定。今はだいぶ落ち着いている。征ちゃんママは、千加ちゃんママが親友であること、千加ちゃん自身がかわいいこと、そして何より千加ちゃんがいる方が息子がめんどくさくなくて楽という理由で、他人の子を預かっていた。