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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -



小ねた
2013/06/16 02:52

※高1夏

「やあ、真太郎。偶然だね」
「ああ、赤司、久しぶりだな」
「そうだね、中学の卒業式以来かな?」
「そうだな。思ったより元気そうで安心したのだよ」
「ふふ、ありがとう。相変わらずお前はやさしいな」
「な!ただ京都での一人暮らしはやはり慣れないのではないのかとだな!!」
「はは!ありがとう、大丈夫だよ。敦にも同じことを言ってうざがられたのだろう?僕らは本当にいい友人を持ったようだ」
「……お前は全く変わっていないのだよ」
「まったく、お前は素直でいいやつだな真太郎?」
「…ところで」
「なにかな真太郎」
「………ようやく伊藤を取り戻したようだが?」
「取り戻す、ね。言い得て妙だな」
「ただのケンカや仲違い、ではなかっただろう。まさかお前が伊藤を拒絶するだなんてお前の本意であるはずがないのだよ」
「…そうだな」
「お前の采配、裁量、計略の内すべてが、必ずしもお前の本心に伴っているわけではないことを、俺は、」
「――だから、お前いいやつすぎると言うんだ、真太郎」

困ったように笑う赤司は、一瞬だけかつてのあいつのようで、俺はただ僅かに眉をひそめるだけ。目の前の友人が、心から望んでいたことはたったひとつで。

「伊藤が、泣いていたのだよ」
「……うん」
「泣いて、お前との再会を喜んだのだよ」
「うん」

知っていた、分かっていた。目の前の友人は変わってしまった。いつからか、変わってしまっていた。けれど、変わらぬものも確かにあったのだ。それだけは、俺やみんながずっと知っていた、ただひとつの。

「おかえり、千加」
「お待たせ、征ちゃ……あれ!緑くん?!」
「偶然、なのだよ」
「そうなんだ!あ、これから征ちゃんとご飯行くんだけど、緑くんもどう?それとももうお昼食べちゃった?」

ふんわりとやわらかく笑う顔は、よく見知ったもの。そうして、ようやく取り戻したものだった。まったく、片割れが傍にいないだけでうまく笑えなくなるだなんてバカにもほどがあるのだよ!……とはいえ、だからこそ片割れたる所以なわけだが。

「せっかくだが遠慮するのだよ」「え!久しぶりなのに!」
「久しぶりだからこそ、お前はめったに会えない赤司とふたりで過ごせ。それに、赤司に睨まれながら食事など俺はいやだ」
「睨まないよ、嫌味は言うけど」「……ふたりで、いればいいのだよ。赤司が帰省している間に思う存分」
「言われなくても」

ほかんと間抜けに口を開く伊藤をいとおしげに見つめたかと思えば、赤司は先ほどと同じ笑顔で「本当に僕はいい友人を持ったよ」と目で送ってきたので呆れてため息をつく。

「仲良くな」

末永く、胸の内で呟いた言葉を誰も、赤司も知らない。。