×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



小ねた
2013/06/07 00:25

幼い頃、映画だかドラマだかの影響でひどくませていた私は、一時期なかなかのキス魔だった。

「おはよー、せいちゃん〜」
「おはよう、千加。ねぐせついてるよ」
「んー?どこー?」
「ん、ここ」
「ありがとーせいちゃん〜、ちゅー」
「……ふは」

あいかわらず頬にキスするのにハマってるんだね……と当時6歳の征ちゃんは呆れているのか照れているのか曖昧な表情で困ったように口元を緩めた。

「でもね、日本じゃ恋人や夫婦くらいでしか、ふつうキスはしないんだよ」
「でも、映画でしてたよ?」
「このまえのはフランス映画だったでしょ?」
「……そっかあ」

今思えば、当時の征ちゃんは少し照れていたのかなと思う。まだあまりそういうことに対して羞恥心を持っていなかった私と違い、征ちゃんは早熟であったために、6歳にして既に照れの時期に入っていたのかもしれない。

「……ごめんね。もうしないから」
「うん。でもあのね、ぼくにだけはしていいからね、ぼくにだけは。だって、ぼくらがおとなになったら、きみとぼくは結婚するんだから」
「あ!そっかあ!けっこんしたら、ふうふになるもんね!じゃあ、千加はせいちゃんとだけはキスしていいってこと?」

首を傾げた私に征ちゃんが幼児とは思えぬ含みのある笑いかたで、にやりと笑ったのが印象的だった。

「ふふ、千加は賢い子だね。そう、だからきみはずっとぼくとだけキスができるんだよ」
「わあ!そうなんだね、すごいせいちゃん!あたまいい!!うれしいなあ!」
「ぼくもだよ。そんなきみが大好き」
「わあい!わたしもせいちゃんだいすき!」




「こうやって私は征ちゃんに洗脳されていった気がするのですが」
「はは、洗脳かあ。まさにその通りだね。大輝は昔「調教」と表現していたけど」
「ちょ!?……いやでも間違ってない気がするのがこわい!」
「純粋で幼いきみを仕込むのは楽しかったな、何でも僕の言うことを信じるもんだから」
「私、中二まで男の子にむやみやたらに近づくと本当に狼に変化しちゃうと思ってたんだけど……!」
「……僕以外の人間に騙されちゃだめだからね」
「いやいや、征ちゃんだから簡単に信じちゃうわけで。征ちゃん以外の人間の言うことは基本的に十回疑えと教え込ませたの征ちゃんじゃん!」
「さすが僕、その通りだよ」
「私、征ちゃん以外のひととまともに生きていけないよ……まあ、テツくんとか例外もいるけど」
「そうだね。それでいいんだよ。きみには僕を中心に考えるていうことがすっかり染み付いているからね」
「征ちゃんの教育の賜物です本当にありがとうございました」



オチない