×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



小ねた
2013/06/06 11:43

しばしば僕は感情をなくした。いや、なくしたという表現は正しくないかもしれない。正しくないというか、正確ではないように思う。とにかく、僕には何故か感情というものが時に手元から零れる瞬間が訪れた。忘れた頃に現れては、制御どころか把握する暇もなく、僕の人生の中でそれはしばしば突然やって来た。

「僕は、きみを本当に愛しているのか、それが時々わからなくなる」

そのゆえに得たものもあれば、届かない刹那の中で永遠に失ったものもあった。終始感情が欠落しているわけではないので、その瞬間を超えたとき、その度に僕は泣いたり笑ったり、死んだように眠ったりした。手のひらから零れた時を、ただひたすら想うのである。

「征十郎は、冬のひとね」

彼女はよく笑う女で、また同時によくわからない喩えで僕の頭を捻らせた。バカではないが、ただ不思議な言葉の使い方をするなと初めの頃は繰り返し思っていた。確かに僕は冬生まれだけど、と言えば彼女はもう一度笑った。

「それは誉めているの?あるいは揶揄でもしているのか?」
「さあ?ただ自信は込めたよ」
「……そう」
「うん、そう」

時折の感情の欠落と、愛情への無意識の飢えは、思えばやはり思春期の頃がピークだった。意識が幾重に分裂するような、特有の迷いながら進む感覚をもて余していた。ふたつのひとみは混濁し、あらゆるものを手のひらを振りかざして手に入れながら、ただ一縷の執着は激流のように増していた。勝つことが、僕の生を保っていた。彼女とは、その頃に出会った。

「なんだか、鏡みたいだね」

初対面で彼女が僕に言った言葉は、生涯呪いのようにつきまとったので、僕は大切に大切に傍に置いた。