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小ねた
2013/05/26 16:24

千加と仲違いをして約一年、僕は実家を離れて京都で一人暮らしをしている。家族や友人、僕の大切なひとのいない地で、まったく新しい生活を送っている。目新しいものがないといったら嘘になる。我ながら冗談だろとか、むしろさすがか?とかつい思うが、一年生で主将という破格の立場、新しいチームメイト、高校バスケのレベルの高さ、東京と京都での文化の違い、高校生活、ひとりで暮らすということ。

きみが、傍にいないということ。

「千加」

恋しくもいとしい、僕の世界で一番大切な女の子。声が聞きたくて、触れたくて。ただ会いたかった。こんなところにいるわけがないとわかっていながら、きみの声を探してしまう。似たような背格好の女の子を見かける度に打ち砕かれる光明を前に目を閉じて胸を痛ませる。きみを求めるあまり、幻聴や幻覚に陥りそうなくらいに、僕はすでに限界だった。自己嫌悪はもう許容を超えていた。会いたい、会いたい、あいたい、あいたいんだ、千加。

――征ちゃん、大好きよ

目を閉じるたびにきみを思い描いた。夢を見るたびにきみに会えないかと期待をかけた。触れたくて、この腕で抱きしめたくてたまらなかった。

――…せい、ちゃん……はぁ、……ん、っ!

何度想像の中できみを抱いたのか、もうわからない。勿論、僕とて健全な十代の男子なので千加が傍にいたときからすでに、頭の中では何度も千加に不埒な行為をしでかしていたが。行動にも移していない。たが、千加に触れなくなって、会わなくなって、回数は増した。寂しさが、僕を追い詰めた。自身を慰めることで、寂しさをごまかそうとした。無意味とわかっていたけれど。

「……ちか…っ」

もしも、もう一度会うことが許されるなら、そのときはきみを抱きしめたい、キスをしたい、僕のものだと印を残したい、ひとつになりたい、そして二度と離さない。

あいたいあいたいあいたいあいたい、あいたいよ

果てるとき、とてつもない虚しさが襲うのだけは未だに慣れない。さみしい、さみしい、さみしい。


夢の中、いとしい千加を抱きしめた。きみは小さく身動ぎをして、やさしく微笑みながら僕の背中に手を回してぎゅうとしがみつくように僕を抱きしめる。僕はそっと顔を近づけて唇を寄せる。微笑むきみに目を奪われながら、虚しさに苛まれつつも己の欲求に任せ今日も夢の中の千加を手に入れる。




煩悩たっぷり