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「#幼馴染」のBL小説を読む
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小ねた
2013/05/16 00:35

ダンダンッと力強くボールが床を叩く音、それを響かせるのは体育館内の静寂ゆえ。数秒の沈黙ののち、彼はひゅっと息を飲んだ。

「行くぜ伊藤ォ!」
「…残念、まだ甘い、ね!」
「……な!」

カットされたボールがコートの外に出た。それを眺めて火神くんは地団駄を踏む。

「かっー!なんでだよくそ!」
「シュート打たれたら防げないし。その前にカットしないと」
「それにしてもなんでそんなカットできんだよ!」
「毎回でもないでしょ。強いて言うならきみ、ワンパターンだし」

指摘するとムカッと来たらしく一瞬顔を怒らしめたが、次第に思考の渦に飲まれていった。

「千加さん、ボールです」
「テツくん、ありがとー」
「なんだか、デジャビュですね」
「…あー、確かに」
「彼を、思い出します」

そういって、揺らぐ視線の中にあるのは。

「私も、征ちゃんを思い出すよ」
「……すみません、ボク余計なことを」
「気にしないでよ!昔のことが、必ずしも悲しいものばかりじゃない」

そうでしょう?と笑えば、テツくんは無言で私の頭を撫でた。

「伊藤?」
「あ、ごめん。なんでもないよ」
「…そうか?」
「うん。火神くんはね、ドリブルチェンジのときに……」

私の、今や唯一と言える武器。観察眼は複製でしかないのだ。最低限のパワーで、低い身長で、私が男子と肩を並べるためには。

「……そういうとこ気を付けたらいいと思うよ」
「おー!ありがとな!」

視覚、分析、予測、タイミング、スピード。それらを武器に、最良の選択を選ぶことが必要だ。選んでも、勝てるわけでもないけど。

「千加さん、今度はボクと1on1してください」

いつか、もう一度、みんなとバスケがしたい。楽しいバスケがしたい。もう一度、征ちゃんの隣に立ちたい。

「もちろん!」

今も、あの頃の夢は消えない。