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小ねた
2013/05/14 19:04

「……」
「やっぱフラれたー?」
「…分かってるくせになんで聞くかな、わざわざ」
「んー、傷つくと思って」
「そりゃどうも」
「大体なんでわざわざフラれるために告白するわけ?赤ちんだって迷惑じゃん」
「まあ、ね。確かにね」
「フラれたくせにまだ好きみたいだし」
「もちろん」
「意味わかんねー」

そういって眉間にシワを寄せる紫原になんとなく笑みがこぼれた。ああ、やさしいなあ。

「心配してくれるんだ?」
「はあ!?そんなんじゃーし!」
「紫原、ありがとね」
「……うっぜ」

そういってやけ食いするみたいに勢いよくお菓子をかきこんだ紫原は私をひとにらみしてから、視線を外した。

「大体、分かってたことじゃん。赤ちんにはもう既に大切な子がいるってこと」
「うん、だから好きになったのが皮肉なとこだよね」
「誰であろうとあの子にとって替わることは絶対できねーと思う」
「うん、絶対幸せになってほしいよ」
「……やっぱ、バカ」
「うん、バカなんですよ私は」

でも、意味がなかったとは思わないよ。赤司くんはあんな素敵なひとなので度々告白されているようだが、しかし彼には既に大切な子がいるので、寸分の迷いなくスパッとみんなフラれてしまう。どんな美少女が告白しても少しだって揺るがない赤司くんは難攻不落として有名なのだ。なんとなく、わかる。

「赤司くんは自分に告白してくる女の子が大嫌いなんだね」
「……分かってんのになんで嫌われようとするかな、ほんと謎」
「本当に好きなら、赤司くんには誰より好きな女の子が既にいることが見てとれるはずだものね」
「ん、それなのに自信満々に告白してくる子とか、あろうことかあの子を侮辱する子までいるんだって」
「……だから、あんな視線だったのか」
「この女の子は一体自分の何を見て好きになったんだろう、何も分かっていないじゃないかって、前にすごい不快そうに言ってた」
「……うん」

多分、赤司くんは傷ついていた。推し量られ理想を押し付けられて、それが実際とは違うとき、その度にきっと彼は虚しく思うのだろう。赤司くんはあまりにたくさんの肩書きを持つせいで、おそらく本当の赤司くんが見えづらくて、そしてそのほんとうをあの子だけが知っているんだろう。だからこそ、自分をまるごと受け止め慈しんでくれるあの子が、彼はいとしくてたまらないんだろうな。彼女を傷つけなじることは、彼にとって赤司くんそのものを害することと同じなんだ。赤司くんのこころの根底にあるは、やはりあの子なのだ。

「あのふたりは、どうか幸せでいてほしいよね」
「……だからバカだっていってんじゃん、フラれたくせに」
「フラれたけど、赤司くんも私の幸せを願ってくれたんだよ。うれしかったなあ」
「……ふーん」
「不満そうだね」
「…べつにぃー」
「ほら、お菓子あげるぞ紫原、相談乗ってくれたお礼」
「そんなもんいらねーし!」
「あり、珍しいー」
「俺は、ただ」
「うん?」
「………なんでもない」

がり、っと飴を噛む音が耳に残って離れなかった。