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小ねた
2013/05/12 22:50

「やーいやーい!千加のひっつき虫ー!きもいんだよー!」
「まじだよなあ!征十郎にくっついてばっか!」
「おれしってるぜー!そういうの金魚のフンっていうんだぜぇ!」
「あはは!!フンー!千加はフンー!きったねぇ!」
「うるさいうるさーい!わたしは、せいちゃんといっしょにいたいからいるの!あんたらにはかんけい…ない、でしょ……!」
「へへーん!泣いてやんのー!」
「泣き虫弱虫ー!」
「うるさいのよ!わたしがだれといっしょにいたってあんたらにはかんけいな……うぅっ!」

目の前にいるのは3人の悪ガキで、よく私はちょっかいを出されていじめられていた。一応啖呵を切るのはいいが、そのあと悔しくて泣いてしまうのも常だった。幼い頃から征ちゃんにくっついていた私はよく男の子からはからかわれ、女の子からはやっかまれたものだった。だけど、その度に。

「おまえら、千加になにをしている」

征ちゃんはヒーローのように助けてくれるのだった。だから私はそんな強くてやさしい征ちゃんに、心底メロメロだったのである。

「うわーん!せいちゃんん!」
「うん、もう大丈夫だよ千加、よしよし」
「げ!征十郎!」
「うわー!おい、どうする?」
「やっべぇよ!おい、こいつめちゃくちゃこわ……!」

何故か途中で言葉を切った男の子は何やらブルブルと震えながら征ちゃんを見ていた。な、何があったらそんなふうに怯えるんだろうか……と首を傾げる私に、征ちゃんはやさしく笑いかけながら頭を撫でる。

「千加、ちょっと砂場であそんでおいで。すぐおわるからね」
「え?せいちゃん……?」
「ちょっと、こいつらに用があるから。ちょっとだけ待っててくれるかな」
「う、ん!いい子にしてまってる!」

よし、ありがとう。と笑う征ちゃんからただならぬ無言の圧力をもらい、私は慌てて砂場へ急行した。用って、……征ちゃん一体なにをするのだろうか…。




「さて」

千加が離れたところにある砂場にちゃんと向かって行ったことを確認したのち、クソガキ3人組の方へ振り向くと面白いくらいに怯える顔が3つ並んでいて、ついより意地の悪い顔で笑えば、さらに怯えるものだから、悪のりは止まらなかった。ああ、全く。大した力もないくせに僕の大事なものに手を出そうとするから、いけないんだ。

「ひ!な、なんだよ征十郎!」
「お前ら、覚悟はあるのか」
「な、なんだよ!かくごって!!」
「そうだ!大体おまえが……!」
「くだらないやきもちで好きな子を泣かすとは、お前たちは本当に幼稚だな」
「はあ?!おまえも子どもだろ!ていうか、べっべつに千加なんかすきじゃねーし!!」
「気を引きたいのは分かるが、それで泣かせてしまうなど逆効果だということが解らないのか?いや、解るわけもないか。とはいえ、おかげでまた千加は僕への思慕を募らせたよ、うれしい限りだ」

そうしてにやりと笑えば、さすがに意味が分からなかったらしい5歳児たちは、ぽかんと口を開けたまましばらく意味を咀嚼していたようだがなんとなくからかわれたことは分かったらしく怒ったように僕への反撃を試みる。

「…で?お前たちは僕にけんかを売って、まさか勝てるとでも?」
「な…!」
「ひいぃぃ!やっぱ征十郎こえぇよおぉ!!!」
「うわああん!」

どうやら千加が気になっているらしい3人組のリーダー格のやつが突っ込んで来たので、ひらりとかわし、軽く転ばしてやれば、何が起こったのか理解できないように呆然としながら僕を見た。……甘いんだよ、いろいろと。

「二度と、僕の千加に余計なことを言うな」

耳元で低く重く囁けば怯えながらやつらは全員退散していった。逃げ惑う山羊のように走り去る3人の背中を見ながら、ひとつだけため息をつく。……疑問を持ってもらっては、困るんだ。僕といっしょであることに対して違和感を抱いてもらっては困るんだ、この先も僕は絶対に千加を逃がす気など更々ないのだから。

「千加」
「せいちゃん、もういいの?」
「うん。わあ、砂のお城か。なかなかだね」
「うん!もうちょっと〜」
「ね、ぼくにも手伝わせてよ」
「もちろん!ここには穴を空けてね、」

満面の笑顔で僕にいかなるお城にするつもりかというのを一生懸命説く千加がかわいくて、僕は自然と笑みがこぼれた。――甘い、甘いんだ。

「けっこんしたら、こんなすてきなお家に住もうね」
「わあ!お城みたいにおおきかったらきっとたのしいね!でもわたしはせいちゃんがいっしょなら、どんなお家でもたぶんうれしいとおもう!」

僕がどれだけ、この女の子が大切で、大好きで仕方がないかなんて。きっと誰にもわからない。僕のきもちは誰にも負けない。この大好きな女の子を、誰にも譲りたくなんてない。

「千加」
「なーにー?あ、お水なくなったー」
「ぼくと、ずっといっしょにいてね」
「え、こっちこそ!わたし、せいちゃんがいなくちゃ、だめだもん!」
「……そっか」

このまま、ずっとそう思っていてほしいよ。この先、一生。何の疑問も抱くことなく、あまいしあわせの中で。

「ありがとう、だいすきだよ」

ずっと、ぼくだけをおもってね。




用意周到とはこのこと!ちょっと成熟させすぎた感はある。