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小ねた
2013/05/12 01:43

「八重」
「八重さん」

右腕に征十郎、左腕にテツヤというまさに両手に花状態であった。なんていうおいしい状況!とはならないのがわたしであった。ともかくこいつらはくっつきすぎてある。いい加減に離れてほしい。

「わかった!わかったから!いいから離れろよ暑苦しい!」
「だが断る!」
「断固拒否です!」

なんでだよ!条件は飲んだだろ!こっちの要求は無視か!

「だーかーらー!日曜なら暇だからふたりとも遊べるって言ったじゃん!ふたりともいい加減離してくれよー、両腕がつる!!」
「八重は僕とだけ遊んでくれればいいんだよ。テツヤ、八重から離れろ」
「何ふざけたこといってんですか、八重さんはボクが独占するんです。赤司くんこそさっさと京都に帰れ」

やーやーと両側で絶対零度の冷戦が続く。頭上で行き交う言い合いに頭が痛くなった。うぉう、なんだか昔よりも激化しているような……そうして今までの経験上、こんなときに限って。

「あー!!うわあい偶然!八重っちー!!」
「ぶへっ」

涼太に真正面から飛びかかられるのである。あまりにも大きな超大型犬が全身全霊をかけて抱きついてきたためにふらりと後ろに倒れそうになったが、両側にいたふたりがわたしの背中を支えてくれたので、背中から倒れることは免れて安堵する。

「…おまえ、いい加減その癖治せよぅ、わたしいつか頭打って死ぬぞ」
「八重っちー八重っちー!!久しぶりっす好き好き好き大好きっすー!!!」
「聞けよおい」

すりすりすりすりと頬擦りとか、あんたそれ男子高校生がすることちゃう!

「……涼太?」
「黄瀬、くん?」
「ひいいぃぃい!!あわあわ、落ち着いて赤司っち黒子っちィイ!!!」
「涼太、泣かされるのと失神するのだとどちらがいい?」
「痛いのか怖いのか、どっちか選ばせてあげますよ」
「「さあ、選べ」」
「ひぃい!どっちもいやっすゥゥウ!!!」

うるさい三人を前にわたしはひとつ、ため息をついた。ああ、今日もわたしたちは。

「……平和だな」

あの頃と変わらない光景を前に、わたしはうれしくて笑うのだった。


兄弟はケンカもたくさんするけど、そのぶん仲直りもできるんです。


「せっかく四人いるし、他のやつらも呼ぶか」
「敦は秋田なのにか」
「お菓子で釣りましょう」
「そういう次元の問題じゃないっすよ!」





高校生なったら愛情表現がなんか増量してるような気がしました。