全員が練習に励んでいる。午前はトレーニングを中心に行っていた為、マネージャー・・・つまり、美里達は選手達の側を離れることがあまりなかった。だから、美里が1人になることがなかったのだ。だけど、午後は違う。各自が自分の苦手なとこを克服する為の練習をしている。これは各自で出来てしまうからマネージャーは必要ない。その為、この時間を利用して美里は部屋でボトルを洗っていた。

「ねぇ。」

「・・・・・・(また?・・・出来ればもう少し練習させてあげたいんだけどなぁ・・・)」

呑気に考えている美里を無視して、春川は話を続ける。

「美里って幸村君と付き合ってるんだよね?」

「・・・それが、何?」

春川の身体がビクッと動いたようだった。それから暫く春川が黙ったと思ったら急に怒った表情を見せた。

「ふーん・・・やっぱり、アンタには消えて貰おうかなっ!」

星がついてきそうな程イキイキしている春川に美里は何故か苛立ちを感じていた。そして、春川は右手を上げ、自分の頬を目掛けて降り下ろす。

バシンッ‥!

乾いた音が部屋に響き渡ると春川は目に涙を溜めて、部屋を出ていった。また、レギュラー達に嘘をつきに行ったのだろう。これから始まるということが明らかに分かった。

「はぁ・・・皆が来るまでにある程度終わらせとこ〜・・・」

そう溜め息混じりに呟いた。暫くして、また部屋の扉が開いた。跡部を先頭に続々と現れる。そこには勿論、幸村やリョーマも居た。

「美里・・・てめ・・・・また、裕奈に手上げたらしいな?!」

今にも殴りかかりそうなくらい怒りを露にして、拳を握っている向日がいる。

「向日。落ち着け。・・・・美里。」

幸村は興奮している向日を落ち着いた声で止め、美里を呼んだ。それが何を示しているのか。分かっている者がこの中に何人いるのだろうか。

「君が俺と付き合っているのは・・・・他の部員達に近付きたいかららしいね。」

静かに呟く声には怒りか伺える。だが、それが本当のモノなのかは本人にしか分かり知れないことだ。

「なっ?!何言ってんのよっ?!私は・・・」

「う、嘘・・・つかないでよぉっ!さっきぃ・・私の前で言ったじゃないぃ!」

美里が春川の方を向くと春川はビクッとわざとらしく肩を震わした。それを見た周りに居るレギュラー達が春川の前に立つ。美里から守るように。

「美里・・・君には失望したよ。もう、君とは付き合えない。」

バイバイと呟いて、幸村は部屋から出ていった。それを聴いた美里は暫くの間、硬直したのだった。


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