春川が出ていった後、美里と幸村で朝食の準備と床に散らばった皿やオカズを片付けた。テーブルに並べ終えた頃、春川と春川についていった者達がここに帰ってきた。美里の存在がないかのように無視して、テーブルにつく。美里も関係無いとでもいうように自分の仕事をしている。
「・・・おう!越前っ!」
「ども。」
嫌な空気が漂うなか、今起きてきたように目を擦っているリョーマが部屋の中に入ってきた。
「あっ、リョーマ!おはよーっ!」
「・・・・」
リョーマが入ってきたことに気付き、美里がニコッと笑い挨拶をした。だけど、リョーマは一瞬、睨んでそっぽを向いた。分かっていたことだが、実際にされると傷付くのだろう。美里は眉を潜めて俯いた。演技ではなく本当に。その様子を見ていた春川は口端をニィッと上げた。
「ねぇねぇ、桃城くぅん?越前くぅんとぉ、美里ちゃぁんってぇ、どぉいぅ関係なのぉ?」
「ん?あぁ。兄弟だぜ。まっ、越前からしてみると嫌なんだろーなっ!人を傷付けても普通にしてる奴なんてよっ!」
「へぇ、兄弟なんだぁ。・・でもぉ、美里ちゃあん可哀想だねぇ。兄弟にもぉ、信じてぇ貰えないなんてぇ・・・」
涙を流しているみたいにうつ向きになる。それに慌てた桃城が焦ってフォローする。
「そんなことねぇな。ねぇよ。当然のことだと思うぜ!それに、春川先輩が気にすることねぇッスよ。」
「ほんとぉ?」
「っ・・・はいっ!」
潤った瞳で上目遣いで見つめられ、真っ赤に顔を染めていた。
(うわぁ!桃って純情だねっ?!)
それを見ていた美里は微笑ましく桃城だけを見ていた。そうこうしているうちに全員が集まった。皆が席についていることを確認すると全員、食べ始める。美里はそれを確認した後、席を立って歩き出そうとすると袖を掴まれた。不思議に思い、掴まれた袖を見ると隣に座っていた幸村が掴んでいた。
「?何?精市?」
「食べないのかい?」
「私はもう食べたから。」
ニコッと笑い幸村を安心させようとする。それでも手を放してくれない。
「何時食べたんだい?」
「精市達の料理を作る前にね。だから、お腹いっぱい。」
空いてる手でお腹を擦りながら言うが、幸村の真剣な目は変わらない。
「じゃあ、何故?さっき1つオカズが無駄になったのに全員分あるんだい?」
「こーいーこともあろーかと多めに作っておいたのよ。」
幸村が何と言おうが退こうとしない美里に溜め息を吐いた。
「美里。俺に嘘付いたって無駄だよ。ほら、少しは食べなよ。」
幸村は美里の腕を引いて無理矢理座らせ、口元にオカズを掴んだ箸を持っていき、食べるように促した。美里は幸村がここまでくると頑固だということを知っている為、短く溜め息を吐き、食べるのであった。その様子を春川が悔しそうに見ていたことなど知るよしもなかった。