第6話


人気のない廊下を歩く2人組。2人の間には沈黙が続いている。
何故こんなところを2人が歩いているかというとある生徒に2時間目の休み時間、北校舎2階に来て下さい、と言われたからである。その生徒は相手が言葉を発する間もなく走り去っていった。なので、誰に呼ばれたのかも何故呼ばれたのかも分からず、困惑した。そして、今、言われた通り北校舎2階に来ていた。

「なぁ、日吉。何か聞こえねぇか?」

日吉と呼ばれた男は眉間に皺を寄せ、耳を澄ます。微かに聞こえてくるのは人の啜り泣く声だ。

「誰か泣いているみたいですね。」

「・・・こっちからだな。」

「宍戸さん。行くんですか?」

宍戸と呼ばれた男は泣き声が聴こえてくる方へ向っていく。その後を日吉も追いかける。近付くにつれ啜り泣く声が大きくなった気がする。

「ここからのようですね。」

ある1画の教室の前に宍戸と日吉は立ち、中の様子を覗う。中に居たのは東條 美姫。宍戸と日吉達のマネージャーだ。すかさず、2人は東條の元に駆け寄った。

「東條っ!?大丈夫か?」

東條は左手首を右手で押さえている。そこからは血が溢れて来ていた。その腕に気付いた2人は驚き慌てた。

「東條さん、手を見せてくださいっ!?」

日吉は持っていたハンカチを手に巻き止血する。

「東條。一体何があったんだよ?」

ただ事じゃないと思った宍戸が東條の前にしゃがみ訊いた。

「・・・徠歌ちゃん、に・・ヒクッ、呼ばれ・・・ここに、来たら・・・うぅ、いきな・・・ヒクッ・・カッター、出して・・・死ね・・って、切りかか・・・来た・・・うっヒクッ・・・」

「永藤さんがそこまでする人だとは思いませんでした。」

「許せねぇ・・な。」

泣き止むことなく話す東條の話を聴いていた2人は徠歌に対して怒りが湧き上がってきていた。

「おい、日吉。東條を保健室に連れてくぜ。」

「はい。」

宍戸と日吉は東條を連れて、保健室へ向かった。その途中、鳳に会い、これまで経緯を話した。

それが仕組まれたことだとも知らずこの者達は悪魔に耳を傾ける。東條が口端を上げていたことにも気付かずに。そして、彼女達は知らない。こんな事が起きているとも宍戸と日吉が敵になったとも彼女達はまだ、知らない。

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