※A


がらり。


「失礼する。…あ」

真っ白な天井床に、真っ白なベッド。数多の薬品の匂い。

(ここが保健室か…覚えておこう。さ、書類を渡して戻るか)

と思ったが、どうやら先生は居ないらしい。
せっかく苦労して迷路から抜けてきたのに、これじゃあ骨折損だ。


(仕方ない、職員室に………)

待てよ。
今は授業中だよな…。
だとしたら、さっきここに入っていった風丸はどうしたんだ?


疑問が湧き、ひとつだけ閉められたカーテンをシャッと開けた。
すると。



「は、ん…ン、はぁ…」

そこには、ベッドの上にM字で寝転び、自慰をしている風丸が居た。
呆然とそれを見つめていると、鬼道の視線にやっと気づいたらしい風丸が急いでそこを隠した。


「き、鬼道…っ」

真っ赤になって口をぱくぱくさせている風丸。
そりゃそうだ、当たり前のリアクションだ。

「…書類を届けにきたんだが、授業中なのにここ入っていくおまえの姿が見えて、それでその…具合が悪いのかと思って」
「…そうか」
「大丈夫だ、誰にも言わな…え?」

声が止まった、というより止められたのは、風丸が鬼道に抱きついているせいだ。
ふ、と風丸が顔をあげ、上目使いで鬼道を見つめる。
(大丈夫か俺の心臓…!!)


「どうした風…」
「鬼道…、俺を抱いてくれないか」


…心臓が、止まった気がした。




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