きっかけは突然に!




「ねえガゼル、キスってした事ある?」
「は…何を突然」

何時ものように自室で読書に慎んでいると、ふと隣から聞き慣れた声がした。グ
ランだ。
相変わらずの、気配もなく他人の部屋に入る趣味の悪さに溜め息をひとつ溢す。
いや、それよりも…問題は彼の用件か。
眉間に皺を寄せ訴えるが、何ともなさそうな奴の顔。
気に入らない、早く出ていってくれないものか。

「キスなど興味がない」
「した事ないんだ?」
「お前には関係ない!」

した事がないというのを認めるのは癪だ。私のプライドが許さない。
しかし…墓穴を掘ってしまったか、少し自棄になって返してしまった。
…グランにはそういう面で気を抜けないから面倒臭い。
ガゼルは少し後悔した。

「自棄になっちゃって。した事ないんでしょ?」
「だからお前には関係ない…」
「したいとは思わない?」
「…は?」
「キス…したいと思わない?」

一瞬思考が止まる。
奴は今なんと…?
キスをしたいか…だと?

頭が回らない。

「何を言って…」
「ガゼル、ね…目、瞑って」
「ふざけ…!!」
「ふざけるなって?残念ながら遊びじゃないんだ」

真面目なグランの顔に少したじろくが、こちらにも捨てきれない理念がある。
私達は、恋をしてはいけない間柄ではないか…。

「だが…私は、」
「男だって?そんなの関係あるのかい」
「……私達の星の秩序では、」
「黙って」
「…………っ!!」

グランの顔が近づき、やがて視界が真っ暗になった。
口に当たるほのかな温かさが、その行為だと私に認識させる。
逃げたいのに、駄目だと思うのに。
…動けない。

「…は、嫌じゃなかったの」
「……煩い」
「かわいいガゼル、抵抗すればよかったのに。…もう逃げられないね」
「…ん…ぅ、ふ…ッ」

抵抗など出来るはずがなかった。
何故なら、とっくに私の身体は言うことを利かないのだ。
いつの間にか手はグランの背中に回っていて。
何度も唇を貪り合った。


心臓が、煩いのだ。






end.



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