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僕は吹雪…、士朗。士朗なんだ。
敦也じゃない、吹雪士朗…。
でも皆は敦也を必要としているって敦也が言った。
僕は要らないんだって。
だから、お仕置き。
溶けない氷。
「…じゃあ、例の場所で。」
相手の返事も聞かないまま、ぷつりと電話を切った。
今日はオフだ。ボールすら触れない、要らない僕はオフ。
だから今日は、僕に酷い事を言った敦也にお仕置きするんだ。
…僕にあんな事言ったの、後悔させてあげる。
士朗は、にやりと微笑むと建物裏にある暗い路地裏へと歩き出した。
『…なあ士朗、どこ行くんだ?こんな薄暗えとこ』
「奧に隠れたサッカー用品の名店があるらしいよ、染岡くんが言ってた」
『…染岡ァ?あいつ今チームに居ねえだろ』
「メールで言ってたんだよ。染岡くんこの周辺詳しいみたい。住んでたのかな?
」
『……ふーん』
すごいや。口からどんどん嘘が出てくる。僕じゃないみたいだ。
…でもまあ、当たり前だよね。だって罪悪感がないんだから。
悪いのは敦也なんだから。
敦也はこんなでたらめな嘘で納得したのか、また奧に戻ったみたい。
…染岡くんの名前で信じるなんて本当にお馬鹿さん。
薄暗く冷たい路地裏を、じゃり、と地面を踏みつける様に進んでいく。
明かりはときどき思い出した様にある、切れかけた街灯だけ。人の気配もしない
、薄気味悪いという言葉が似合う路地裏。
一歩、また一歩と地を踏みつける足取りに、…迷いはない。
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