A


円堂や鬼道の許可もないまま、話を聞かれてはまずいので人の来ない屋上へ。
肌寒いこの季節、放課後の屋上には誰も居なかった。

豪炎寺がタンクの裏の壁に凭れ、促されるまま風丸も隣に座る。
少し気まずい空気が流れたが、打ち破ったのはやはり豪炎寺だった。

「風丸…、あれは本当なのか」

何が、とは言われなくても分かる。
新聞の記事の事だ。
これ以上迷惑を掛ける訳にもいかないと風丸は腹をくくり、ゆっくりと口を開いた。

「………ああ、本当だ。あの写真も、合成じゃない…。」
「……そうか」
「俺は、サッカー部を辞めた方がいいのかもしれない…」
「それは違う」

雷門中学新聞部。
昔はどうだかは知らないが、今となっては信頼は部活一と言っていい程厚く、先生も生徒も皆記事を毎日楽しんでいる。
デマなどは一切無いのが評判で、写真も合成じゃないと判断されればもうこっちは何を言っても無駄だ。
つまり、こっちの負が悪すぎるのだ…。

辛い選択だが、迷惑を掛けた皆の為なら。
自分の欲望で成ってしまった事実で、皆のサッカーを潰すことなんて絶対にしたくない。
風丸の覚悟は、もう形になっていた。


しかしそれを否定する豪炎寺に、風丸は視線で訴える。

「鬼道が、今教室で円堂と話し合っていてな。いや、正確にはもう話し終えてるんだが」
「それは、部室で聞いた…」

豪炎寺がそうか、と頷く。
続きがあるのか、間を取りまた口を開いた。

「鬼道は、俺がサッカーを部活を辞める代わりに、風丸は勘弁してやってくれと言ってるらしい」
「鬼道が…!?」

何としても辞めさせなければ!!
風丸は立ち上がり教室へ向かおうとするが、豪炎寺の制止によりそれは叶わなかった。
まあ聞け、とまた座らされる。

「おまえが鬼道を庇うように、鬼道もおまえを必死に庇おうとしてる。おまえらは同じ気持ち…、……両思いなんだよ」

言いにくそうに、ばつが悪そうに、ちょっと頬を染めながら言われた台詞。

…両、思い?
その言葉を理解する前に、また豪炎寺が口を開いた。



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