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「な、なんだよ…あれ」

焦った。マジで焦った。
その生徒は、保健室の外で息を整えていた。

見ちゃった。
…あのサッカー部の鬼道と風丸の、セックスシーンを。

…撮っちゃった。

胸のカメラに、ばっちり。



その風、疾風の如く。A



その日はどっちかと言うと穏やかな日だった。
朝も自然に目が覚めたし、そのお蔭で出る時間まであと15分もある。

(…久々に、部室一番のりでもしてみるかな。)

一番は、いつもあのサッカー馬鹿キャプテンだから。
たまには鍵を開けて待っててあげよう。

そんな事を思い、頬を綻ばせながら風丸は朝の肌寒い道程を駆け出した。



「風丸さぁん!!」
「おう、おはよう宮坂」
「おはようございますっ」

ふと後ろから聞こえた聞きなれた声に、風丸は振り向いた。
やっぱりな、と笑顔で挨拶してやれば、元気な声が返ってきた。
元陸上部後輩の、宮坂了だ。


「早いんだな、まだこんな時間だぞ」
「はい、なんか目が覚めちゃって!こうなったら早くに練習して、先輩達をびっくりさせようと思ったんです」
「おまえらしいな」

くすくすと笑ったら、宮坂は「そうですか?」と顔を赤くして答えた。
全く、かわいい後輩だ。

「風丸さんは、いつもこんなに早く出てるんですか?」
「いや、俺もたまたまだよ。今日は天気がいいから、多分目覚めがよかったんだな」
「ああ、わかります!ぽかぽかして、気持ちいいですよねぇ」
「な」

そんな他愛もない会話をしながら、まもなく学校へ到着した。
別れの挨拶をし、とりあえず荷物を置く為それぞれの校舎に向かう。


ここまでは、いつもよりいい感じの一日の始まりだったんだ…。

…ここまでは。




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