「デルフィナちゃん。こんなところにいたの?」
不意に声を掛けられて視線を移すと、そこには露出の激しいドレスを着た女性がいた。
彼女はマリアさん。
私が今一番お世話になっている、狂人ばかりのここでは珍しくマシな人。
「なにかご用ですか?」
「ええ、はいこれ」
そう言って手渡されたのは綺麗なフリルやドレープをあしらったドレス。
所謂ロリータ服ね。
「私に、ですか?」
「そうよ。一番綺麗な貴女にプレゼントですって」
「そうですか…、ありがとうございます」
にっこりと笑ってお礼を言えば少し、ほんの少しだけ顔を悲しげに歪める彼女。
……ふふっ。
そんな顔をするぐらいならば与えなければいいのに。
まあ無理ね。彼女もまた、支配される側の人間ですもの。
私は踵を返した彼女の背に薄く笑う。
ここの人間は、特に男はたくさんの物をくれる。
今のような綺麗なお洋服だとか美味しいお菓子だとか、女の私にならば香水とか、ね。
でもこれは無償の愛とやらではない。
勿論彼らにも下心はある。というか、下心しかないんじゃないかしら。
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