ごきげんよう。
最近はこの挨拶が定着してしまったわね。
…私はいったい誰に話しているのかしら?
まあ、いいわ。
ここが異世界であることだとかこの場所のことはもう話したけど。
私が今暮らしている花街については詳しく話さなかったわよね。
あんまり気分の良い話じゃないからしなかったけれど。
私も嫌なことを思い出すし。
それに、ここには品位の欠片もないんですもの。
彼らに品位を求めたところで無駄だと最初から分かってはいたけれどね。
まあでも、どれだけ悲惨で下品かは、話しておきましょう。
そうね。
まず始めにこの場所はここに住む人々からは【楽園】と呼ばれているの。
だから、これからはこの場所のことを【楽園】と呼ぶことにしましょう。
………気は乗らないけれど。
【楽園】には静寂なんてないわ。
あちらこちらから男の野太い笑い声やら女の高笑いやらが聞こえてくる。
性交に明け暮れるものや薬物に浸るもの、まさしくなんでもありなのね。
喧しいけど、まだ我慢できる。
それよりも、この香水臭いのはどうにかならないのかしら。
明らかに付けすぎだし、もう何の臭いかもわからないぐらい入り交じっているし。
香水というのは微かに香るくらいがエレガントなのにね。
文句を言ったところで何も変わりはしないから無視するけれど。
どうか私の鼻がおかしくなりませんように。
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