酒場の店主からその話が俺の元に舞い込んで来たのは、丁度退屈を持て余し新しい刺激を求めていた頃だった。








「女?」

「ああ、最近向こうから出てきた小娘だが、これがなかなか食えない女でな」

「あんたが言うんだったら、そうなんだろうな」

「あれはお前とも渡り合えるんじゃないか」

「……へぇ」






あの店主の目利きは本物だ。
それは今までの経験からよくわかっている。


だからこそその女に興味を惹かれた。


そして数日後、店主の計らいで彼女と共同で仕事をすることとなる。
















「彼女が例の子?」



開店前の酒場に入った瞬間。
いや、正確には入る前から視線を感じた。



互いに笑みを貼り付け、注意深く観察する。




喪服の様な黒いドレスを纏う彼女はとても美しい娘だった。


薄く化粧の施された顔には年相応の可憐な笑みが浮かんでいるが、その紅い瞳からは幼さは削ぎ落とされ底冷えする 程冷たい。

清楚で優雅な振る舞いに混じる絡み付くような妖艶さ。


そんな酷く矛盾した雰囲気を持つ女だった。




成る程、店主の言葉も頷ける。
これは一筋縄ではいかない人間だ。






それが、彼女―――デルフィニア・リストレイシスへの第一印象。





 



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