酒場から家に帰って来た俺は特にすることもなくベッドに腰掛けた。


俺の家には最低限の物しかない。
魔法の勉強を始めた頃、一度ここを訪れたデルフィナが牢獄の様だと嘆いていたのを覚えている。
それからと云うもの俺の家に来ることを拒んで、勉強会は彼女の家ですることになった。







ミルス・クレアに行こうと思ったのは勿論思い付きだ。
もっと深く魔法を学びたいと思ったのも事実だが、新しい刺激が欲しいと思った方が大きい。



一緒に勉強していたデルフィナも誘ったが、あっさりと断られてしまった。



前からミルス・クレアには興味があったようなので、乗ってくるかと思ったが、やらなければならないことがあると言われてしまった。



「やらなければならないこと、か」



彼女は興味のあるものはとことん追求する女だ。
本人曰く、一流でないと気が済まないらしい。
だからこそ、一流の魔法学校であるミルス・クレアにも行きたがっていたのだが。


それを捨てなければならないほど重要な事とはなんなのだろうか。





―――コンコン





扉を叩く音に思考を止める。


いったい誰なのか。
ナイフを忍ばせて鍵を外し扉を開ける。


そこには。



「アルバロ!」

「デルフィナ?どうした?」



少しだけ息を切らせた彼女はやや興奮気味に詰め寄ってきた。



「私も連れていって!」

「どこに?」

「ミルス・クレア!」

「別に構わないが」



連れていくのではなく、試験を受けるだけなのだが。
今の彼女に言っても一蹴されるだけだろう。




 



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