今日が俺の誕生日だと思い出したのは、デルフィナが勉強をいつもより早めに切り上げた夜だった。



「ああ、そう言えばそんな日だったな」

「予想通りのお言葉ありがとう」



呟いた俺に苦笑を漏らした彼女はあっという間にテーブルの上の書物を片付け、予め作っていたと云う料理を並べた。


………なんというか、無駄に手が込んでいるものばかりだな。



「ワインは赤で良いわよね?」

「ああ」



すると今度は高そうな赤ワインとワイングラスが置かれる。



「……お前、何を企んでる?」

「何も企んでなんていないわ。失礼ね」

「……………」



心底心外だと言わんばかりに眉を寄せる彼女だが、ならば一度普段の自分の行いを省みればいいと思う。


自分の利益を一番に優先する抜け目のない女がいくら誕生日とは云え、こんなに盛大に用意していれば裏を疑うのは当然だ。



「お友達のお誕生日なんですもの」

「……友達、ね。にしてもやり過ぎじゃないかなこれは」



俺は彼女の中でそれなりのポジションにはいるらしい。
だが、それとこれは少なくとも俺の中では結び付かない。


俺の言葉に彼女は眉を寄せたまま当然のように言い放った。



「見知らぬ他人ならばまだしも、お友達のお誕生日は盛大に祝うものだって、言ってたもの!」

「……………」



もはや言葉も出てこない。
デルフィナは本当にそう思っているらしい。
目が本気だった。



「……このワインは?また盗ってきたのか?」

「まさか!お誕生日のお祝いに使うものを盗むなんて、そんな非道なことはしないわ!」




 



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