夜も明けない深夜。
とあるアパートの一室。



私はベッドに腰掛けてお酒を煽る。


今の私はなにも身に纏っておらず、それはベッドの上で死に絶えている男も同じ。


まあ、簡単に言えばこの男に抱かれたの。


先程終わったから心臓にナイフを刺して本当の終了。



この男は恋人とかそう云うのではなくて初対面。


昨夜声を掛けられたのだけれど、顔がまあまあ良かったからOKしたのよ。





男は醜いわね。
好きでもない女を抱けるんですもの。


でも醜いのは私も同じ。
好きでもない男に抱かれるんですものね。




前世で物心ついたときから娼婦だった私は今でもたまに体を売る。


でもそれはお金の為ではなく精神安定の為。




かつて男達は私を好き勝手に踏み荒し、その爪痕が消えない私は男に抱かれることで安心する。



それは躯が違う今でも同じ。



唯美主義者の私はこんな自分が大嫌いだけれど、何度直そうとしても駄目だった。


正確な理由は分からないけれど、クロエは私が愛を渇望しているからだと言ったわ。



でも、私は愛なんて不確かなものを信じられない。
無いとは言い切れないけれど、有るとは思えないわ。



愛を確かめる営みにすら愛がない環境で育ったからかそういうのには希望を持てない。



確かに、この男のように私に好意を向ける者もいる。
……まあ、この男は私の体狙いでしょうけれど。
でも好意は愛ではない。
愛はそんな簡単なものではない筈。



でもクロエの指摘が正しいとするならば、一つ矛盾が生じる。



渇望とはそれ自体を知らなければできないこと。
当たり前だけれど、知らないものを渇望なんてできないわよね。




 



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