「思ったより早かったのね」



約束の夜11時。正確には11時の5分前。


近付いて来る分かりにくい気配の人間に声を掛ける。



「そっちは予想通りだな」



暗闇から滲み出る様に現れた彼は朝とはまったく異なる服装をしていた。

まあ人のことは言えないのだけれどね。



彼は肌と云う肌をバンテージで覆っており、その上から黒い服を着ている。
その美しい顔はマスクで隠されて今は見えない。


対して私はというと長い髪をリボンで高く結い上げ、普段着ているものよりもシャープなドレスと黒い手袋にローヒールのブーツ、彼と同じく黒いマスクを着けている。


………うん、私達どこからどう見ても不審者だわ。



「場所は把握しているわよね?」

「ああ」

「結構よ」



簡単な確認の後、私達は並んで街を出る。
幸い目的地は遠くない。
数時間もすれば着くでしょう。




ああ、因みにリルはお留守番よ。
一人の時はたまに連れてきているけれど、今日はもう一人いるからね。


今頃むくれているでしょうから今度なにか甘いものを与えないと。





地を蹴る足はそのままにそんなことをぼんやりと考え、気付かれないように小さく苦笑した。





 



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