店から出て路地裏に入ると、渡されたメモリスから情報を得る。
お互い全て読み終わるとデルフィナは手慣れた手付きでメモリスを砕いた。
「さて。取り敢えずお仕事の復唱からしましょうか。抜けているところがあったら仰って頂戴ね」
そう前置いて彼女は先程の情報を述べていく。
場所は比較的近いところにある町外れの屋敷。
ターゲットはその屋敷に住む人間全員。
殺し方に指定はない。
「以上よ。なにか加えることは?」
「特にない」
「そう。ところでつかぬことをお聞きするけれど、情報収集は得意?」
「愚問だな。得意じゃなかったら今ここにいない」
俺の答えに満足したらしく、彼女は笑みを深めた。
「では出発は今夜11時。この街の入口に集合しましょう」
暗に時間までに必要な情報は自分で集めておけと告げた彼女に目を細める。
俺も彼女も例え同業者とは言え、いや同業者だからこそ、会ったばかりの人間を信用などするはずもない。
互いに自分で調べたことしか信じないと理解しているからこその言葉だろう。
やはり頭は回るらしい。
「 わかった」
「ではまた後で、ごきげんよう」
軽く一礼してかつかつ、とヒールを鳴らして去っていく彼女を暫く 眺め、準備をするためにその場を後にした。
嗚呼、これはなかなか楽しめそうだ。
惑わす黒衣
(何を喰らった成れの果てなのか)
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