「ミルス・クレアって言えば、世界一の魔法学校なんだろ?そこにソレで乗り込むワケ、オマエ」

「コレで乗り込んじゃ悪い?」

「ユートーセイには見えないぜ?」

「確かにね。ただの不良だわ」



制服を着るとしても、その奇抜さは隠せないでしょうね。
でも、わざわざ優等生を気取るつもりは私にもないわ。



「いいんだよ、見えなくて。……どうせ向こうには俺達の素性もバレてる」

「……マジで?」

「マジで」

「大丈夫なのか……?」



仰々しく肩を竦めたディノさんに苦笑が漏れる。
すると、アルバロがあの身分証を取り出した。



「……なあ、ディノ。これ、なんだかわかるか?」

「?ナニ?メダル?あんま高そーには見えないケド」

「……これは、ミルス・クレアの生徒達に渡される身分証だ。街や学校への出入りすべてをこの紋章で管理してる。古代種の魔法は底知れないが、どうもこれには俺と云う人間の気配がしっかり刻み込まれてるらしい」

「オイオイ……」



呆気にとられたような声に笑って私も口を出す。



「恐ろしいわよね、魔法と云うものは。こんな小さなもので、すべての行動が把握されてしまうのだから」



おかげさまでリルとより真剣に作戦を練らなければならなくなってしまったもの。


その時のことを思い出して思わず遠い目になる私を他所に、二人の話は進む。



「……カネ貰ってもイラナイね」

「くれって言われても、あげないよ。……これは俺達の血と汗と涙の結晶」

「他人の血と涙と命、の間違い?」

「そうとも言う、かもね」

「そうとしか言わないでしょう?」




 






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