「それで?"彼女"の動向は掴めたの?」
私の問いに首を横に振るリル。
動向と云うのは、"彼女"がいつこちらに来るかとか、何をしに来るのかとか、そんな詳しいこと。
「申し訳ございません!配下にも探らせてはおりますが、如何せん相手が曲がりなりにも神なもので!」
「貴方が手間取るなんて、神様と云うのは余程強い力を持っているのね」
「はい!それはもう鬱陶しいくらいに!」
彼女の言葉から分かると思うけれど、悪魔であるリルと神は相性が悪い。
丁寧な口調は相変わらずだけれど、言葉の半分以上は悪態なのよ。
リルの話によると、お互いに嫌悪しているらしい。
………彼女が私に力を貸してくれているのも、神への当て付けかもしれないわね。
そんなことを考えて、思わず遠い目になる私を他所に、彼女は勢い良く立ち上がった。
「ですが!ミルス・クレアに行けばより詳しいことを把握出来ると思います!」
「そう、じゃあお願いするわ。でも、くれぐれも内密にね」
「勿論ですわ!」
意気込む彼女に苦笑して、そこではたと気付く。
「向こうではどうやって逢い引きしましょうか」
流石の都合良く同室にはなれないでしょうから、なにか関わる理由を作らなければ。
「それもお任せください!わたくしに抜かりはございませんわ!」
………背後に炎が燃えている気がするのだけれど、幻覚よね。うん、そうよね。
「なにか良い案でもあるの?」
「はい!わたくしと主さまが同室になればよろしいのです!」
思わぬ言葉に暫く沈黙してしまう。
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