「本当?良かった!」



本当に嬉しそうに笑う彼女に思わず目を見開く。
一年以上共にいるが、こんな顔は見たことがない。



「やらなければならないことはいいのか?」

「それがミルス・クレアに行けば解決するの」

「へぇ」



満面の笑みを浮かべるデルフィナだが、何故かその笑顔に違和感を感じた。
確かに見たままならばその感情は歓喜だろう。
だがその裏側にあるのは別の何か。
しかもそれは決して良いものではないと俺の勘が告げている。



「わざわざそれを言いに走ってきたのか?」

「あ、」



暗に次でも良かったことを指摘すると、少し冷静さを取り戻したのか顔を赤らめた。



「そ、そうね。私としたことが、すっかり浮かれてしまっていたわ」



ごめんなさい、とばつが悪そうに謝罪する彼女からは先程の違和感は感じない。



「そんなに嬉しいことがあったのか?」

「ええ、とっても!」

「へぇ。どんな?」

「それは………秘密よ秘密!」



冷静さを欠いた今なら目的も聞き出せるかと思ったが、寸前で隠されてしまった。


だが、こうも露骨に隠されると更に気になるものだ。


そしてなによりも、気に食わない。



先程の純粋な笑みはなにに向けたものなのか。


こうもあっさり意見を変えたその理由はなんなのか。



彼女のことが分からないことが腹立たしい。



以前ならば決して抱かなかった感情に、内心で首を捻るが答えはでない。





「夜分にごめんなさいね。眠っていたのならば本当に申し訳ないわ」

「いや、構わない」



心底申し訳なさそうな顔をした彼女はもう完全に普段の冷静さを取り戻した様だった。



「それではまた明日」

「ああ」




挨拶もそこそこに彼女は軽く一礼して去って行く。


それを見送った後、冷えきったベッドの上で未だに消えない蟠<ワダカマ>りの原因を思案することにした。




















そんな風に笑っていなかった
(知らないものばかり)



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