思わず身を乗り出してしまう。
「どこに?"彼女"はどこに来るの?」
「ミルス・クレア魔法院ですわ」
「……え、」
つい先程聞いた単語に頭が真っ白になった。
「ミルス・クレア……?」
「はい。ですが、先程も言った通りいつ来るかまでは把握出来ませんでした」
「………少し、待って頂戴」
久しぶりに椅子の背凭れに凭れ掛かって深呼吸する。
少し落ち着いて考えなければ。
もしミルス・クレアに来るのならば、学校がどうとかなんて、古代種がどうとかなんて言っている場合ではないわ。
と言うか、私、先程そのチャンスを蹴ってしまったようなものじゃないの。
「リル!少し出掛けてくるわ!」
「今から、ですか?」
「ええ、アルバロのところに行かなくては!」
掛けてあるコートを急いで着て、家から飛び出す。
アルバロはまだ店にいるのかしら。
少し乱暴めに扉を開けると、マスターが驚いた顔でこちらを見る。
「マスター!」
「どうした。お前が走ってくるなんて珍しいな」
「アルバロは!?」
「お前が帰った後直ぐに帰ったぞ」
「ありがとう!」
店から飛び出してアルバロの家を目指す。
彼の家は私の家よりも遠くはない。
「……着いた!」
少しだけ乱れた息を整えて扉を叩いた。
運命は夜に囁く
(嗚呼、待ちきれない)
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