「まあいいわ。いってらっしゃい」
「残念だな。本当に来ないのか?」
「ええ」
笑顔で頷いた私に彼は溜め息を吐いてお酒を煽る。
せっかく誘ってくれたアルバロには悪いけれど、こればかりは譲れない。
「今日はそろそろ帰るわ。試験頑張って頂戴ね」
「ああ、またな」
まだ残ると言う彼を置いてお代を払った私は帰路に着いた。
「ただいま」
「お帰りなさいませ!主さま!」
「あら、戻っていたの?」
「はい!今日は朗報を持って帰りましたわ!」
家の中に入ると、暫く地獄に帰ると言って居なかったらリルが出迎えてくれた。
喉が渇いたので紅茶を淹れる。
魔法を使えば簡単だけれど、これは自分でやっている。
まあお湯を沸かすのは魔法を使うけれどね。
蒸らしている間に林檎を剥いてお皿に乗せる。
「それで、朗報とはなにかしら?」
カップに口を付けながら尋ねると、返ってきたのは予想しなかった言葉だった。
「"彼女"の居場所が掴めましたわ」
「っ!」
―――ガシャンッ
思わずティーカップを落としてしまった。
カップが割れて紅茶が飛び散るが、気にしてはいられない。
「本当、に……?」
「はい。居場所、と言うよりはトリップしてくる場所が分かっただけです。それに、いつ来るかは分かっておりません」
「十分よ。上出来だわ!」
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