振り向いたと同時に開かれる扉。


そして現れたのは。



「彼女が例の子?」




………あら、美形。

じゃなくて。
比較的ラフな服装の、私のものよりも少し色素の薄い黒髪の青年。

端正な顔に薄く笑みを浮かべてはいるが、甘いラズベリー色の瞳の奥には私を品定めするような冷たい光が宿っていて。


ふぅん。なかなかイイ男じゃない。



勿論そんな目に臆する筈もない私は取り敢えず、と思い立ち上がる。



「はじめまして、お兄さん。私はデルフィニア・リストレイシスと申します。どうぞデルフィナとお呼びくださいな」



にっこりと笑顔を貼り付け、ドレスの裾を持ち上げて丁寧に礼をする。
人間関係と云うのは初対面で舐められてはいけないのよ。



「ご丁寧にどうも。俺はアルバロ・ガレイ。よろしく」



同様に笑みを浮かべた彼と暫しそのまま睨み合う。


先に視線を逸らしたのは私だった。



「マスター」



先程から我関せずを貫いていた店主に声を掛けると視線だけをこちらに寄越した。



「なんだ」

「先程のお話、乗ったわ」

「だろうな」



そうぼやいてメモリスを投げる。

あらら、お見通しだった見たい。
まあ、彼の目利きは素晴らしいものね。



「鍵は《黒牡丹》だ」

「ありがとう。それとカクテルごちそうさま」



そう言った後、店主から目の前の彼に視線を移す。



「お待たせしてごめんなさいね。……場所、移しましょうか?アルバロさん」
















罪に濡れる瞳
(賢い人間は大好き)



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