本当に無かった事にされそうだったのでこちらから扉を開ける。



「随分な歓迎ありがとう、デルフィナ」

「……ごきげんよう、アルバロ。お久しぶりね」



心の籠っていない言葉の応酬と無言の押し問答の後、溜め息を吐いた彼女は苦い表情のまますっと道を空けた。


その様子に俺は笑みを濃くして横を通り抜ける。


背後から些か殺意を感じたが気にしないでおく。








初めて入った彼女の部屋は文字通り女の子の部屋だった。



一人で住むには広いスペースに白と黒を基調とした上品なアンティークの家具が置かれている。


大きめの窓は白いレースのあしらわれた黒いカーテンで閉ざされていた。



「座っていて頂戴」



後から来たデルフィナに促されてリビングの中央にある椅子に腰を掛ける。
彼女はキッチンに入っていった。



目の前のテーブルには綺麗に黒いレースのテーブルクロスが掛けられ、小さな花瓶には赤い薔薇が生けられている。




暗殺者のくせにこんなに細部にまでこだわった小綺麗な部屋だとは流石に思わなかった。



「お待たせ」



暫くしてデルフィナがキッチンから出て来た。
その手には二人分の紅茶とケーキ。



「わざわざどうも」

「一応、お客様だからね」

「成る程」



相変わらず変に律義な女だ。


いや、正確には律義と言うよりはマナーにこだわると言った方が正しいだろう。




 






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