しかし、本は出てこなかった。



………と云うことは。





「誰かが借りているのではないかしら」

「………ユリウスか!あいつと言うやつは!」



ギリ、と歯軋りした後、ノエルさんは勢いよく図書館から出て行ってしまったわ。



………必ずしも借りた人間がユリウスさんではないことは言わない方が良いのよね、この場合。





「騒がしい人でしたね」

「それが彼の長所でもあるわ」



顔はとても整っているしね。



本音を言えば、もう少し自信を持って、落ち着いて物事を考えれば良いと思うけれど、彼ぐらいの歳では今ぐらいが相応だわ。



………なんだか年寄りらしくなってしまったわね。
聞き流して頂戴。





それから当初の予定通り理論に対して論議をして行く。


数時間後、切りの良いところで手を止める。



「今日はこの辺りでお仕舞いにしましょうか」

「そうですね」



本を元の場所に戻し、メモをとった紙を纏める。



「来週にでもパピヨンメサージュを送るわ。実験はその時で良いかしら?」

「ええ、僕は構いません」



別に寄る場所があると言った彼と別れて私も図書館を出る。



特に行き先は決まっていないけれど、どうしましょうか。





ああ、そう言えば。
エストさんに対しての感想の続きだけれど。
ああも頑なに他者を拒むのは何故なのかしらね。



私の予想では、あの並外れた魔力に原因があると思う。
力の高さが故に孤立せざるを得なかったのか、はたまたその力を手にする過程になにかあったのか。



勿論、聞き出すなんて無粋な真似はしないし、そこまでする程興味も湧かないのだけれど。




 






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -