物凄いスピードで食べている二人に聞こえないぐらいの声でアルバロに話し掛ける。
「いつから王族の方とお知り合いになったの?」
「つい最近だよ。たまたま教室で席が近くてね」
「ふぅん」
これはまた油断のならない人と知り合ったものだわ。
朗らかな印象を残しているけれど、瞳の鋭さは偽れない。
面倒ではあるけれど、嫌いではないわね。
「本物に会ったのは久しぶりだよ」
「でしょうね」
それはそれは楽しそうに笑ったアルバロに溜め息が出る。
妙に勘繰られないように気を付けなければ。
やがて"彼女"がこのミルス・クレア魔法院に来たとき、誰が敵になるのか分からないのだから。
もしかすればアルバロが敵になるかもしれない。
可能性は低くとも、有り得ないわけではない。
彼のことは信用しているし、疑いたくなんてないけれど、この件に関しては絶対に口外できないわ。
「ところでラギさん、何故ドラゴンの姿になってしまったの?」
「ラギでいいぜ。オレもデルフィナって呼ぶし」
「ごめんなさいね、これは癖のようなものだから。ラギくんで構わない?」
「ああ、それで頼む」
ラギくんの話によると、彼は女性に抱き付かれると変身してしまうらしい。
………なんだか可哀想というべきか、微妙なところね。
その体質を直すためにミルス・クレアに来たそうよ。
考えてみれば、ドラゴンは魔法の影響を受けない体質ですものね。
それからショコラプーペが慌てて止めに来るまで食べ続ける二人を見続けた。
おかげさまであまり夕食を食べられなかったのは言うまでもないわよね。
一人のただ其れだけの事
(人の悩みは千差万別。当然よね)
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