「あれはなにかしら?」
午後の授業が終わりリルと共に寮に戻ろうとしていた最中、小さな赤い物体がのろのろと空を飛んでいるのに出くわした。
しかしそれはすぐに地面に落ちてしまう。
「あれはドラゴンですわね!サイズはとても小さいですけれど!」
「そう言えば、ハーフドラゴンの少年がこの魔法院に来ていると聞いたことがあるわ」
あれが彼なのかしら?
ドラゴンなんて滅多に出逢えるものではないので、興味が湧いた私は彼に話し掛けてみることにした。
「ごきげんよう、ドラゴンさん。なにかお探しかしら?」
「……肉」
「肉?」
小さく返された言葉に首を傾げていると、ぐぅ、と大きく音がした。
「……もしかして、お腹が空いていらっしゃるの?」
尋ねると首を振って肯定された。
ここから食堂へはかなり距離があるのだけれど、先程の早さで飛んでいくつもりなのかしら。
ふぅ、と溜め息を一つ漏らして後ろで待機しているリルに声を掛ける。
「この荷物を持っていて貰える?」
「勿論ですわ!お姉さま!」
教材を彼女に渡し、小さなドラゴンにもう一度向き合う。
「よろしければ、私が食堂まで抱えていきましょうか?」
「………悪ぃ、頼む」
暫く迷っていたが背に腹は変えられないらしく、渋々頷いた。
「失礼するわね」
一声掛けてその身体を持ち上げる。
見た目にそぐわず、なかなか重みがあった。
「行きましょう、リル」
「はい!」
待っていてくれたリルと共に少し早足で食堂に向かった。
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