「それで先程の話だけれど、ユリウスさんってあの人だったのね」

「そうそう。おかげさまでなかなか刺激的なことが起こってるんだよ」



なんとか二人の仲裁をしてアルバロに席に座って貰い、食事を再開することに成功したわ。
未だにむくれていたリルに林檎を与えて機嫌をとった。
林檎はリルの好物なのよ。



それにしても、前にアルバロが話してくれたことがある男子寮を騒がせている人が彼だったとはねぇ。
なんでも夜遅くに魔法の実験をしたりしているのですって。



「確かに四六時中魔法のことを考えているのだったら、知識が豊富なのは当然ね」

「でも夢中になりすぎて生活がおざなりになるのはどうかと思うけどねえ」



アルバロが苦笑気味に呟いた言葉に思わず固まってしまう。



「ねぇ、リル」

「はい!なんでしょう!」

「彼、先程図書館に残ると言ったわよね?」

「はい!確かにそう仰っていました!」



もしかして彼、夕食を食べずに図書館に籠っているのではなかしら。


乾いた笑みを浮かべてしまう。



天才となんとかは紙一重というものね。



「彼、いつか死ぬのではないかしらね」

「さあね。あ、このケーキ食べる?」

「ええ、戴くわ」

「じゃあ、はい」

「……なにかしら、この手は」



差し出されたフォークにまた顔をしかめると、彼は笑顔のまま当然のように仰った。



「見ればわかるでしょ?あーん、だよ」

「……………」

「アルバロさま!なに調子に乗っているのです!?そんなことわたくしが許しませんわ!」

「うるさいなあ。どうして一々君の許可がいるのかな?」

「当然です!お姉さまはわたくしのお姉さまです!」



また始まった言い争いに私は溜め息を吐いた。














どれだけ自身を削られても
(叶えたいものがあるのよね)



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