「驚いたわ。貴方とても優秀なのね」
「君こそ。俺はあんなこと気付かなかったよ」
すっかり意気投合し、そのまま図書館の中で魔法について語り続けてしまった。
リルが探しに来なければ夕食を逃してしまうところだったわ。
「貴方とはまたお話したいわね」
「俺も、今度実験に付き合って欲しいな」
「ええ、喜んで」
まだ少し図書館に残ると言った彼とそこで分かれて、私はリルと夕食を食べる為に食堂に向った。
ショコラプーペからご飯を受け取って、空いている席に向かい合って座る。
このショコラプーペってみんな同じ顔なのよね。
イヴァン先生が作ったものらしいけれど、私も作れるのかしら。
「お姉さま、先程の方はどちらさまですか?」
「ユリウスさんよ。でも彼の名前をどこかで聞いた気がするのよね」
「前に話したでしょ?寮を騒がせてる問題児君だよ」
口許に手を当てて思案していると、聞き慣れた声と共に後ろから腕を回される。
斜め上を見ると予想通りあの胡散臭い笑みを浮かべるアルバロがいて溜め息を吐いた。
「食事中に抱き付かないで頂戴」
「食事中じゃなかったら抱き付いても良いんだ?」
揚げ足を取られて思わず顔をしかめる。
本気を出せば振り払えるけれど、出せないから離れるまで待つしかないのよね。
「食事中ではなくとも駄目よ。早く離れて」
「えー」
本当にいい加減にして欲しい。
目の前のリルが凄く怖い顔をしているわ。
まあ、それが目的なんでしょうけれど。
「ちょっとあなた!いい加減にお姉さまから離れなさい!」
「どうして君に指図されなきゃいけないのかな?俺の勝手でしょ?」
遂に我慢の限界だったのか、リルが思いきり立ち上がってアルバロに抗議し始めた。
アルバロもアルバロで面白がって煽りにかかるし。
本当、静かに食事をしたいのだけれど。
と言うか、周りの人達に迷惑だわ。
私は痛む頭を押さえて、未だに言い合う二人を宥めることにした。
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