今日はもう授業は無いから、そのまま寮に戻る。
早く帰ってこの本達を読みたいわ。
若干わくわくしながら抱える本を見ていたから、瞬間まで前から来た人に気付けなかった。
そして気付いた時にはもう遅く。
―――ドンッ
「……っ!」
「うわっ」
相手と思いきりぶつかり、バランスを崩してしまう。
咄嗟に受け身を取ったが、お互いの持ち物がばら蒔かれる。
「ごめん、大丈夫だった?」
「ええ。こちらこそごめんなさいね」
ぶつかる寸前まで気付けなかったことに内心舌打ちして顔を上げ、その相手を見る。
………あら、美形。
じゃなくて。
ぶつかった相手は私より少し年下の少年だった。
青い髪に青い目。
とても綺麗な男の子。
落ちてしまった荷物を拾い集めていると、ふと視界に入ったものに瞠目する。
「この本、貴方が借りていたのね」
「え?ああ、これ?……もしかして探してた?」
「ええ。じゃあもう一度図書館に行こうかしらね」
「ごめん、返却期間が過ぎてたの忘れてて」
申し訳なさそうに眉を下げた彼に気にしないで、と告げ並んで道を引き返す。
「俺はユリウス。君は?」
「デルフィニアよ。長いからデルフィナと呼んで頂戴」
ユリウス、どこかで聞いたことのある名前ね。
どこだったかしら。
首を捻っても思い浮かばない。
「ねえデルフィナ。もしかしてこの本の前の巻はもう読んだ?」
「ええ、一通りは」
「じゃああの魔法物理学の応用の部分の―――」
「あれは属性の有無と言うよりは―――」
思わず議論を白熱させてしまい、気付いたときにはもう図書館のすぐ前だった。
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