「冗談でしょう?貴方といたら男が寄ってこないじゃないの」
「俺がいるから良いでしょ?」
「良くないわ。貴方はお友達よ」
笑顔で紡がれる言葉に深い溜め息を吐いた。
………自分がその対象ではないと知っているでしょうに。
彼は私がたまに男遊びをしていることを知っている。
それに。
「……私には貴方は勿体無いわ」
「俺に君が勿体無いんじゃなくて?」
「そちらでも構わないわよ」
思わず漏らしてしまった本音に驚いた顔で返されて内心顔をしかめる。
こんなことを言うつもりではなかったのに。
「とにかく。さっさと行きましょう。ここは広いのだから、時間を無駄にはできないわ」
「はいはい、わかったよ」
またも仰々しく肩を竦めるアルバロに何故か苛立ちを感じながら足を早めた。
………何故こんなにも彼の態度が気に障るのかしら。
本質はなにも変わっていないし、彼のすることに口出しするつもりも、する権利もない。
いつものように目を瞑って普通に接すれば、なに一つ問題ない筈なのに。
一度だけ隣を歩くアルバロを盗み見る。
今の彼の口許に浮かぶ笑みは私の知っている彼のもの。
そのことに少し安堵を覚えて、すぐに打ち消す。
きっと気のせいなのだと言い聞かせて、外壁の観察に集中することにした。
或いは戸惑いの狂想
(知らない人みたいで寂しい、だなんて)
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